2012年3月2日金曜日

MBAマネジメント・ブック

今回紹介する本は、ビジネス書としては珍しいロングセラーです。ビジネスマン必読の書。
『[新版]MBAマネジメント・ブック』 グロービズ・マネジメント・インスティテュート編著 ダイヤモンド社 2002年発行

内容は、大きく次の7部で構成されています。前から順番に読んでいく必要はありません。自分の仕事に関係する分野、興味のあるところを選んで読めばいいと思います。
10年前の本ですので、内容が古い部分もあります。読むなら「改訂3版」(2008年発行)をお薦めします。
各部、20項目のテーマ(第6部ITだけは15項目)があります。1テーマが、見開き2ページ図解付きでまとめられており、読みやすいよう工夫がされています。
  • 第1部 経営戦略
  • 第2部 マーケティング
  • 第3部 アカウンティング
  • 第4部 ファイナンス
  • 第5部 人・組織のマネジメント
  • 第6部 IT
  • 第7部 ゲーム理論・交渉術
以下、この本のポイントを紹介します。

第1部 経営戦略 ==========================================================================
1 経営戦略の意味 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 経営戦略の意義と企業の目的
  • 企業を成長、存続させるには、企業が進むべき方向性を示し、自社の競争優位を存続させる実用可能な方策を打ち出さなくてはならない
  • 経営に対する理念を深め、リーダーシップを発揮することは、トップ・マネジメントだけでなく、ミドル・マネジメントにも求められる
2 経営理念と戦略レベル
  • 企業理念は企業の存在意義や使命を普遍的な形であらわしたもの
  • 企業戦略はそれを具現化するための基本的な枠組み
  • 経営戦略は、全社戦略・事業戦略・機能戦略から構成
  • それぞれの戦略レベルにおいて、経営理念やビジョンとの一貫性や、他の戦略レベルとの整合性が重要
3 戦略方策プロセス
  • 戦略策定プロセスとは、経営理念を実行可能なアクション・プランに落とし込む際の基本的な流れ
  • 戦略策定プロセスは、一方通行の流れではなく、仮説・検証を繰り返したり、実施結果や環境変化に応じて戦略の見直しを行う
2 全社戦略 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4 全社戦略の構成要素(1)-ドメイン
  • 全社戦略を考える際、注目すべき要素:ドメイン、コア・コンピタンス、資源配分
  • ドメイン(事業を展開する領域):戦う領域を限定するもので、企業活動の指針
5 全社戦略の構成要素(2)-コア・コンピタンスと資源配分
  • コア・コンピタンス:企業内部で養った中核的な力のこと、自社独自の価値を生み出す源泉
  • 企業は保有する事業の製品に対して限りある経営資源を適正に配分する必要あり
  • 不足している経営資源や能力は、アライアンスやアウトソーシングなどを戦略的に補完
6 前者ポートフォリオと事業ライフサイクル
  • 適正な資源配分をするためには、事業ポートフォリオと事業ライフサイクルの分析が必要
  • 事業ポートフォリオの3つの視点:①事業の魅力度、②自社の競争優位、③他の事業とのシナジー
  • 事業ライフサイクル:導入期・成長期・成熟期・衰退期の4段階、それぞれの段階で戦略課題は異なる
7 ポートフォリオ・マトリクス
  • ポートフォリオ・マトリクスは、事業ポートフォリオを考察するときに有効
  • ポイントとなる要素を絞り2軸にまとめたマトリクスを作成、各事業を位置づけることにより、その事業に関する示唆が得られる
  • 代表的なポートフォリオ:BCGのPPM(ボストン・コンサルティング・グループのポートフォリオ・マネジメント)、GE(ゼネラル・エレクトリック)のポートフォリオ
8 事業拡大と多角化の基本戦略
  • 企業は成長するために、いろいろな方向(企業ベクトル)への多角化を図る
  • 企業ベクトルの選択は、事業ポートフォリオにおけるシナジーに大きく影響を与える
3 事業戦略 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 競争優位を築くための基本戦略
  • 競争優位を築くための3つ基本戦略:コスト・リーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略
  1. コスト・リーダーシップ戦略:競合他社よりも低いコストを実現することがテーマ
  2. 差別化戦略:自社の製品を差別化して、業界の中でもユニークだと見られる何かを創造することがテーマ
  3. 集中戦略:特定の顧客層、特定の製品、特定の市場など限られた領域に経営資源を集中することがテーマ
  • 事業特性や市場環境、自社の経営資源などを十分考慮し、どの戦略が有効かを判断
10 事業の経済性分析
  • 戦略をコスト面から分析するための事業経済性の3つの考え方
  1. 規模の経済:事業の規模の大きさによって低コストを実現する
  2. 経験曲線:累積経験量を増やしてコストダウンを図る
  3. 範囲の経済:事業活動の範囲を広げることによって資源を有効活用し、経済効率を高める
11 外部環境分析
  • 戦略をつくる過程で、現実を正確に判断するために環境分析を行う
  • 分析の漏れや重複を防ぐツールとしてフレームワークが有効
  1. マクロ環境分析・・・自社でコントロールできないが、企業活動に影響を与える要素を検証:PEST(Politics政治、Economy経済、Society社会、Technology技術)
  2. 3C分析・・・マクロ環境よりも具体的な分析:Customer顧客、Competitor競合、Company自社
  3. SWOT分析・・・市場における機会(Oppotunities)を探り、自社にとっての脅威(Threats)を見つけ出し、内部分析では自社の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を把握
12 業界分析:業界構造と「五つの力」
  • 業界構造の分析を行うときのフレームワーク:ポーターの「五つの力」分析(Five Forces Analysis)・・・①新規参入の脅威、②代替品の脅威、③買い手の交渉力、④売り手の交渉力、⑤業界内の競合他社
13 業界分析:アドバンテージ・マトリクス
  • 業界の競合相手を分析する手法「アドバンテージ・マトリクス」・・・業界の競合要因と優位性構造の可能性を2つの変数により、4つの事業タイプに分けるもの
  • それぞれのタイプにより事業の経済性が異なり、成功の可能性も異なる
14 内部分析:バリューチェーン(価値連鎖)
  • バリューチェーンとは、企業が提供する製品やサービスの付加価値が事業活動のどの部分に生み出されるかを分析する手法
  • 付加価値に着目することにより自社の優位性を探り、基本戦略を考えたり、競争分野を決めたりする
4 競争戦略 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
15 競争上の地位に応じた戦略
  • 業界内の競争上の地位:リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー
  • 戦略は地位によって制約を受ける
  • 定石と言われる戦略を理解し、自社の地位を把握した上で戦略を考える
16 事業ライフサイクルに応じた戦略
  • 成長期にある事業は容易に業績を伸ばすことができるが、成熟期になるとシェア競争が激化するなど競争のルールが変わり、戦略の転換が求められる
  • 成熟期に移行する業界の競争戦略:①製品構成の合理化と正しい価格政策、②製品の絞り込みや製品構成の見直し、③既存顧客向けの品揃えの充実
  • 撤退戦略:継続的に達成目標を下回っている事業は再建策を提出させ、それでも結果が得られす、撤退のメリットが、デメリットを上回る場合は、撤退の意思決定をする
  • 新規事業戦略
  1. ハード要素で事業展開・・・技術的な革新により新製品を創り出す
  2. ソフト要素で事業展開・・・マーケティング手法やビジネスシステムなどの変革により新しいビジネスモデルをつくるパターン
  3. ニッチ市場の開拓・・・いままで誰も気づかなかった新しい市場を発見しこそでいち早く優位性(ノウハウ、優良顧客、調達先との関係など)を構築するパターン
5 戦略の実行 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
17 戦略実行における視点
  • マッキンゼーの7Sモデル・・・戦略の実現可能性の判断、組織全体の整合性をはかる:①社内の仕組み(Strategy)、②組織(Structure)、③社内の仕組み(Systems)、④人材(Staff)、⑤社内のノウハウ(Skills)、⑥経営スタイル(Styles)、⑦企業の価値観(Shared Value)
  • PDCAサイクル・・・管理の一連の動きを追ったもの:Plan-Do-Check-Action
  • ストレッチ・・・従来の改善ではできない高い目標を設定し、その実現に挑むこと 成功例:GEは「ストレッチ」というキーワードを掲げ、「不可能なことは何もない」と言うチャレンジ精神を企業の隅々まで浸透
  • ベンチマーキング・・・他社のやり方を学び、優れた部分を取り入れる手法
6 経営戦略トピックス ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
18 M&Aとアライアンス
  • 事業拡大の際に外部資源を有効活用する手法:M&A(Mergers & Acquisitions 合弁・買収)、アライアンス
  • グローバル企業をして生き残るには世界のシャアの10%を獲得することが必要、内部成長では間に合わない場合M&Aは有効な手段
  • アライアンス・・・複数の企業が互いに何らかのメリットを得ようとして協力すること
19 バリューチェーンの再構築
  • 情報化の進展の影響を受けて、従来は当然と考えられていた事業のルールが根本的に変わり、業界全体の仕組みが大きく変化する場合、それは脅威でもあり、競争優位を築くチャンスでもある
  • バリューチェーンの再構築により新たな可能性を探るチェック項目
  1. バリューチェーン全体の中でコストの割に価格が低い部分はどこか
  2. バリューチェーン全体の中で自社事業と顧客はそのような関係があるか
  3. 自社の事業でネットワーク化の影響をうけるのはどこか
  4. バリューチェーンが変わることで、現在の戦略的資産のうち重荷になるものはどれか
  5. 新しいバリューチェーンであそのような新しい活動・能力が必要となるか
  • 新しいビジネスモデルのパターン
  1. レイヤーマスター・・・特定の付加価値活動で優位性を築く方法
  2. オーケストレーター・・・独立した企業が連なる新たなバリューチェーンを構築・運営し全体の価値を高める方法
  3. マーケット・メイカー・・・既存のチャンネルの弱みや欠点をついて新市場を開拓する方法
  4. パーソナル・エージェント・・・ネット上の無数の情報をナビゲーターが、新たな購買代理店として機能する方法
20 グローバル化と規格競争
  • 企業がグローバル展開をする2つの理由:①市場拡大による成長機会の追及、②低コスト化
  • グローバル展開の3つのパターン
  1. マルチ・ドメスティック戦略・・・現地市場への適合性をを重視するパターン
  2. グローバル戦略・・・本社の指揮下で共通した製品とそのバリエーションを全世界に供給する統合重視のパターン
  3. 両者の中間的なパターン
  • デファクトスタンダード(規格競争)
第2部 マーケティング =======================================================================
1 マーケティングとは何か ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 マーケティングの発想
  • マーケティングは顧客満足を軸に「売れるしくみ」を考える活動
  • 継続的な成長をしていくために、いかに顧客のニーズを満たすかという発想に立つ
2 マーケティングの役割
  • 顧客との接点となるマーケティングは、生産や営業、開発、財務、人事などの機能を統合する役割がある
  • マーケティング戦略は全社レベル、事業レベル、製品レベルで「売れるしくみ」を追求
  • それぞれの戦略レベルにおける整合性や経営方針をの一貫性が大切
3 マーケティング・マネジメント
  • マーケティング戦略の構築は、環境分析に通じたマーケティング機会の発見、セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング、マーケティング・ミックスという一連の流れを経る
  1. マーケティング環境分析と市場機会の発見・・・マーケティング環境を分析することにより、市場の機会と脅威、自社の強みと弱みを見極め、自社にとってのマーケティング機会を発見する
  2. セグメンテーション(市場細分化)・・・環境分析の結果を踏まえて、不特定多数の人々を、同じニーズを持つかたまり(セグメント)に分ける
  3. ターゲティング(標的市場の選定)・・・市場を構成するさまざまなセグメントの中から、自社の事業を展開するのに最もふさわしいセグメントを選び出す
  4. ポジショニング・・・競合製品に対して、自社製品をどのように差別化するかを決定する
  5. マーケティング・ミックス(4P)・・・ターゲットとするセグメントに対して働きかける具体的なマーケティング施策の総称:4P・・・Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(コミュニケーション)
  6. マーケティング施策の実行と評価・・・施策後は評価し戦略にフィードバックする
2 マーケティング環境分析 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4 市場の機会の発見
  • 自社にとっての市場の機会とは「他社にない強みを発揮できる舞台」
  • 環境分析を行い、他社に対して競争優位を発揮できるような市場機会を創造的に発見することが重要
5 マーケティング・リサーチ
  • マーケティングリサーチの目的は、マーケティング上の戦略「仮説」を「検証」すること
  • リサーチにおいて明確な目的を持ち、市場の状況を的確に把握できる手段を選択・活用する必要がある
  • リサーチのプロセス
  1. リサーチ目的の設定・・・だれがどのような目的のために、どのような情報を必要としているかを明確にすること
  2. 仮説の設定・・・リサーチは仮説なしには進められない、仮説をたてて分析すると効率よく調査できる
  3. リサーチの設定と実施・・・仮説を実証するために必要なデータの収集
  4. 仮説の検証・・・検証したい事柄に合わせてさまざまな分析手法を用いる
3 市場戦略 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
6 セグメンテーションとターゲティング
  • セグメンテーションはどのような軸(セグメンテーション変数)で分けるかがポイント
  • ターゲッティングでの注意事項:①市場規模、②自社の強み、③製品ライフサイクルの段階、④参入障壁、⑤競合の電略、⑥環境要因
7 ポジショニング
  • ポジショニングとは、顧客の頭の中に自社製品をユニークなものとして位置付けてもらい、製品イメージをつくり出す活動
  • ポジショニング成功のための鉄則
  1. ポジショニングのターゲットの「サイズ」が適切であること
  2. 売り手の考えるポジショニングが、顧客に正確に伝わること
  3. 売り手のポジショニングに、顧客が共感すること
  4. 売り手である企業全体のポジショニングと製品のポジショニングに整合性があること
4 マーケティング・ミックス --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
8 製品特性
  • マーケティングでは、「製品」はモノそのものではなく、提供するサービスを含んだ広い概念でとらえる
  • 製品は通常、「コア」「形態」「付属機能」の3要素に分解できる
  • どの要素が差別化の決め手となるかは、製品特性や競争環境などにより異なる
9 ブランド
  • ブランドは単なる名前やマークではなく、消費者と企業にさまざまな価値を提供する資産
  • 企業の利益拡大に貢献する強いブランドは、継続的で一貫性のある投資の結果として生まれる
  • ブランドの3つの機能
  1. 購買に関する情報処理の時間やコストを節約する「識別」機能
  2. 購買リスクの軽減・回避に役立つ「品質保証」機能
  3. ブランドによって満足感が高まったり自己実現の手段となる「意味づけ」機能
10 新製品開発
  • 新製品開発のプロセス:①製品コンセプトの開発、②戦略仮説の見当、③製品化、④市場参入
  • 新製品開発のアプローチ:①ニーズ型開発、②シーズ型開発
11 製品ライフサイクル
  • 市場の発達段階に応じて、顧客タイプや顧客の製品知識、競争環境などに違いがあるため、マーケティング課題も異なってくる
  • 製品のライフサイクルは企業の主体的なマーケティング活動でコントロール可能
  • 新製品をどれだけ早く買ったかによる顧客の分類:①イノベーター(改革者)、②アーリー・アダプター(初期採用者)、③フォロワー(初期大衆)、④レイト・フォロワー(後期大衆)、⑤ラガード(採用遅滞者)・・・社会学者E.M.ロジャース
  • プロダクト・エクステンション・・・企業が時代の変化に応じてマーケティング戦略を見直し修正を重ねる活動
12 価格と事業経済性
  • 価格は企業の収益性に大きく影響するため、需給関係や価格弾力性などを考慮しながら、戦略的な価格設定が必要
  • 価格は消費者に対するメッセージや競合他社に対するシグナルとしても機能する
13 戦略的価格設定
  • 価格設定の際考慮すべき要因:コスト、カスタマー・バリュー、競合環境
  1. コスト・・・利益を確保するためには、コストが価格の下限となる
  2. カスタマー・バリュー・・・「顧客が適正と認める金額」で価格の上限となる
  3. 競合環境・・・価格は競合相手の価格に影響を受ける
14 流通チャネルの意義
  • 流通チャネルは、企業が効率的に製品を市場に届けたり、競争優位を構築する上で重要
  • 流通チャネルはさまざまな形態があるので、製品特性や顧客特性、競合環境等を総合的に判断する必要がある
15 流通チャネルの構築プロセス
  • 流通チャンネル構築の視点:①流通チャネルの長さ、②流通チャネルの幅、③展開エリアの決定、④チャネル・メンバーの剪定、⑤チャネルの動機づけ政策
  • 流通チャネルの長さ・・・チャネルの段階数を決定、流通業者を用いるかどうか判断
  • チャネルの幅・・・流通業者の数を決定
  1. 開放的流通政策・・・販売店を限定しない
  2. 選択的流通政策・・・仲介業者の販売力、資金力、メーカーへの協力度合い、競合製品の割合、立地条件などの一定の条件を満たした業者に優先的に販売させる
  3. 排他的流通政策・・・代理店、特約店として選定、独立販売権を与える代わりに、同業他社製品の販売を制限
  • 展開エリアの決定・・・販売エリアの広さを決定、例1:一斉に全国展開、例2:地域を限定し徐々に展開エリアを拡大
  • チャネル・メンバーの選定・・・具体的にどのような企業と取引を行うかの選定基準を明確にする必要あり
  • チャネルの動機づけ政策・・・自社製品の販売をを積極的に取り組んでもらえるようチャネル・メンバーに対するインセンティブを検討
16 購買決定プロセスとコミュニケーション手段
  • 顧客は購買に至るまでにいくつかの心理的なステップを通る。そのステップ通過を加速するのがコミュニケーションの役割
  • 製品や顧客の特性に合った最適なコミュニケーション・ミックスを選ぶことがポイント
  • AIDMAモデル・・・潜在顧客に対して注意を促し(Attention)、興味をもたせ(Interest)、欲求を喚起し(Desire)、動機づけを行い(Motive)、行動を起こさせる(Action)メッセージを伝える
  • コミュニケーションの手段:①広告、②セールス・プロモーション、③人的販売、④パブリシティ(企業がメディアに発信した情報をニュースとして報道してもらうこと)、⑤口コミ
  • コミュニケーション戦略における重要な考え方
  1. プッシュ戦略・・・流れの上から下へ働きかける戦略
  2. ブル戦略・・・広告などでメーカーが直接、顧客に働きかける戦略
17 広告戦略
  • 広告は企業イメージを左右させるほど経営に与える影響は大きい
  • 広告戦略はメディア戦(媒体)戦略とクリエイティヴ(表現)戦略とに大別
  • メディア戦略の役割は「伝える場の確保」、クリエイティヴ戦略の役割は「伝えるべきメッセージづくり」
18 セールス・プロモーションと販売戦略
  • 広告と並んで影響力を持つコミュニケーション手段、セールス・プロモーションと人的販売
  • セールス・プロモーションは広告を補う機能がある
  • 営業担当者による販売活動は、コストがかかるが、顧客と直接双方向的にコミュニケーションを行う最も有効な手段
5 新しいマーケティング潮流 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
19 顧客維持型マーケティング
  • マーケティングの目的は顧客創造重視から顧客維持重視へと徐々に変化
  • 新規顧客を開拓するよりも、既存顧客の離脱を最小限におさえ、既存顧客からの生涯売上を最大化するほうが効率的で高収益が図れる
  • 顧客維持型マーケティングの手法
  1. ワン・トゥ・ワン・マーケティング(リレーション・マーケティング)・・・「顧客一人ひとり」を把握することを前提に展開されるマーケティング、市場シェアではなく「顧客内シェア」を高めることが目的
  2. データベース・マーケティング・・・データベース化した顧客情報より新しいマーケティング刺激を創造、顧客にフィードバックする
20 ウェブ・マーケティング
  • インターネットを使ったマーケティング
  • 「同時性」「双方向性」をいかに活用できるかがポイント
  • ウェブ広告:①バナー広告、②ポップアップ広告、③タイアップ広告
  • メール広告:①メールマガジン広告、②オプトイン広告・・・あらかじめユーザーの属性と必要とする情報を登録してもらい、ユーザーの希望にあった情報だけをメールで送る
第3部 アカウンティング ======================================================================
1 企業経営とアカウンティング ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 企業経営とアカウンティング
  • 企業の経済活動を映す鏡であるアカウンティングは、ステークホルダーに対して説明責任を果たすことが目的
  • 情報の非対称性を軽減するためにも、ディスクロージャー(情報開示)は企業の責務
2 アカウンティングの目的
  • アカウンティングには、外部ステークホルダー向けの財務会計/税務会計と、内部向けの管理会計がある
  1. 財務会計・・・財務に関して客観的で公正な情報を開示することが目的
  2. 税務会計・・・法人税額の算出が目的
  3. 管理会計・・・企業内部の経営管理手段として、経営者の意思決定や業績管理に活用
2 アカウンティングの基礎 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
3 収益および費用の認識
  • アカウンティングは「企業は永遠に継続するもの」という前提に基づき、人為的に区切った会計期間を用いて経営成績を把握する
  • その結果、実際の現金の収入・支出と会計上の収益・費用の認識との間にズレが生じる
  • 利益を確定するには、収益・費用をどの時点で認識するかを決めなくてはならない
  • 認識基準として、①現金主義、②発生主義、③実現主義がある
4 財務諸表の成り立ち
  • 財務諸表は企業活動における企業の財務状態や業績、その変化を示したもの
  • 財務諸表を理解するには、企業活動と資金の流れとの関係を理解しておくことが必要
  • 財務諸表の要:①損益計算書(P/L)、②貸借対照表(B/S)、③キャッシュフロー計算書
  1. 損益計算書(Profit & Loss Statement)・・・ある一定期間における企業の経営成績を示したもの
  2. 貸借対照表(Balance Sheet)・・・ある時点での企業の資産内容を明らかにしたもの
  3. キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)・・・企業の各期の現金および現金同等物の増減を整理したもの
5 損益計算書
  • 損益計算書(P/L):一定期間の企業活動をまとめた財務諸表で企業の経済的価値の増減を示す
  • その期の売上高から始まり、売上総利益、営業利益、税引前当期利益、当期利益という具合に、さまざまな利益を段階的に表す
  1. 売上総利益=売上高-売上原価
  2. 営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
  3. 経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
  4. 税引前当期利益=営上利益+特別利益-特別損失
  5. 当期利益=税引前当期利益-法人税-住宅税および事業税
6 貸借対照表(資産)
  • 貸借対照表は大きく資産の部と負債・資本の部に分けられる
  • 資産は企業が保有するしきんの具体的形態を示すもので、企業の財産を表す
  • 企業が将来利益を生むための経営資源を表しているので、金額(規模)だけでなく、適正度(品質)も重視する必要がある
  • 資産(Assets)は通常、流動資産、固定資産、繰延資産に分類される
  1. 流動資産(Current Assets)・・・「短期間(1年以内)に現金化されるもの」と「短期間に費用になるもの」で構成、当座資産、棚卸資産、その他流動資産の3つに分類
  2. 固定資産(Fixed Assets)・・・「長期にわたり費用となるもの」、有形固定資産、無形固定資産、投資その他資産の3つに分類
  3. 公開企業ではほとんど見られない
7 貸借対照表(負債+資本)
  • 貸借対照表の負債と資本は、企業活動に必要な資金をどこから用立てたのかという資金調達の源泉を示す
  • 負債は第3者からの借り入れで決められた期日に支払うべき債務(他人資本)、資本は株主から集めた資金(自己資産)
  • 資本は通常、資本金、法定準備金、余剰金に分類
  • 負債(Liabilities)とは営業サイクル上で生じた債務、流動負債と固定負債に分けて計上される
  1. 流動負債(Current Liabilities)・・・短期間(1年以内)に支払わなくてはならない負債 例:支払手形、買掛金、未払費用、未払金、前受収益、未払法人税、短期借入金
  2. 固定負債(Fixed Liabilities)・・・支払期限の猶予が長期的な負債 長期借借入金・社債、退職引当金、賞与引当金など各種引当金から構成
  • 資本(Stockholder's Equity)とは投資家から集めた出資金と過去からの利益を蓄積したもので、資本金資本準備金、利益準備金、その他余剰金のつに分類
  1. 資本金(Capital Stock)・・・株主が企業に拠出した資金
  2. 資本準備金(Additional Paid‐in Capital)・・・商法の規定により、事業が赤字になっても資本金を取り崩さずに済むように準備しておく資金
  3. 利益準備金・・・商法の規定により、配当や役員の賞与を会社が支払うたびに、その10分の1を資本金の4分の1まで徐々に積み立てることになっている
  4. その他余剰金(Retained Earnings)・・・過去の利益の蓄積分から利益準備金を除いた残りの額、いわゆる内部留保
8 キャッシュフロー計算書
  • 企業活動を継続させるには、企業の営業成績のみならず、流動性(資金繰り)と現金収入の状況を把握しておく必要がある
  • 営業活動、投資活動、財務活動について各期の現金の増減を整理したものがキャッシュフロー計算書
3 会計トピックス --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 連結会計
  • 大企業は多数の子会社・関連会社を持ち、企業グループ(企業集団)を形成
  • 活動実態からみると、グループを1つとして考えるほうが妥当
10 税効果会計と退職給付会計
  • 税効果会計と退職給付会計は会計制度の国際化から導入された制度
  • 税効果会計では法人税等を、退職給付会計では退職一時金と企業年金の積立不足分を費用としてとらえ、財務諸表に反映させる
11 有価証券
  • 有価証券は保有目的別に計上基準が異なる
  • 売買目的の保有有価証券は時価法で、子会社。関連会社株式は原価法で計上
4 指標分析 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
12 総合力分析:ROAとROE
  • ROA、ROEは企業の総合的な収益力を判断する指標
  • ROA(Return On Assets:総合資産利益率)「利益/総資産」・・・総資産という経営資源を使ってどれだけ利益を上げたかを見る指標、ROAを上げるには「売上高利益率」「総資産回転率」を向上させる
  • 売上高当期利益率(当期利益/売上高)⇒収益性・・・売上高当期利益率を高かめるには、売上に必要な費用(売上原価、販管費)を下げる
  • 総資産回転率(売上高/総資産)⇒効率性・・・総資産を使って総資産の何倍の売上高を達成したかを表す、売上高当期利益率をはトレードオフの関係
  • ROE(Return On Equity:事後資本利益率)「当期利益/自己資本」・・・投下資本に対する利益率、株主の投資がどの程度リターンを生み出したかを示す指標、ROEを上げるには「財務レバレッジ」「総資産回転率」「売上高当期利益率」を向上させる
  • 財務リバレッジ(総資産/自己資本)⇒負債の有効活用・・・負債(銀行借入れや社債発行)をどの程度有効に活用しているかを見る
  1. ROE=(当期利益/売上高)×(売上高/総資産)×(総資産/自己資本)
  2. ROA=(当期利益/売上高)×(売上高/総資産)
  3. 売上高当期利益率=当期利益/売上高
  4. 総資産回転率=売上高/総資産
  5. 財務リバレッジ=総資産/自己資本
13 収益性分析
  • 売上高収益率とは売上高に対してどれくらいの利益を獲得できるかを示す指標
  • そのような利益を用いるかによって数種類の売上高利益率が考えられる
  • さまざまな売上高利益率を、機関比較、他社比較うることのより、企業の有益構造上の特徴を把握できる
  1. 売上高総利益率(売上総利益/売上高)・・・利益率の高い製品を販売しているか否かを示す
  2. 売上高営業利益率(営業利益/売上高)・・・本業の利益率が高いかどうかを示す
  3. 売上高経常利益率(経常利益/売上高)・・・金融収支のよしあしや資金調達力の相違が反映
14 安全性分析
  • 企業の安全性は収益性と並ぶ大きな評価要素
  • 安全性分析の指標:自己資本率、流動比率、当座比率、固定比率など
  • 安全性とは財務体質の健全性を意味、万一の場合に債権者に対して約束通りの支払いが可能かどうかを示す
  1. 自己資本比率(自己資本/(負債+自己資本))・・・総資本における自己資本の割合、これを高めるには増資や内部留保により長い時間をかけて実現する、日本製造業の平均は35%程度
  2. 流動比率(流動資産/流動負債)・・・短期間で返済する負債は、短期間で現金化される資産で賄われる:通常150%から200%が望ましいとされる
  3. 当座比率(当座資産/流動負債)・・・流動資産のうち、現金化しにくい棚卸資産を除いた当座資産と流動負債の比率:通常100%以上が望ましいとされる
  4. 固定比率(固定資産/自己資本)・・・固定資産の調達にどれだけ自己資本によって賄われているかを示す指標
  5. 固定長期適合率(固定資産/(自己資本+固定負債))・・・長期に安定した調達手段をより広義にとらえたもの
  6. インタレスト・カバレッジ・レシオ((営業利益+金融収益)/支払利息)・・・事業利益が、支払う金利の何倍あるかという金利支払能力を示す指標
15 株式会社が企業を評価する指標
  • 株式投資家は企業の会計データに加えて、将来への期待や含み資産なども考慮して企業を評価
  • 株価は投資家の評価の度合いを反映
  1. 時価総額(発行済み株式数×株価)・・・株主資本の総額を時価で表したもの、M&Aのとき注目される指標
  2. 配当性向(配当金総額/税引後当期利益)・・・利益のうちどれだけ配当に回したかを示す指標
  3. EPS(Earnings per Share:1株当たり利益)(税引後当期利益/発行済み株式数)・・・企業の利益を1株当たりに換算して収益性を見るための指標
  4. PRE(Price Earnings Ratio:株価収益率)(株価/EPS)・・・株価と1株当たりの利益(EPS)の比率を示す指標
  5. PGR(Price to Book Ratio:株価純資産倍率)(株価/1株当たり純資産額)・・・株価と1株当たりの純資産の比率を表す指標
5 財務諸表分析の注意点 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
16 棚卸資産
  • 棚卸資産は、先入先出法、後入先出法、平均法などがあり、どの方法を用いるかによって売上原価や期末残高が変わる
  • 棚卸資産を評価する基準は原価法と低価法がある
17 減価償却と固定資産
  • 固定資産は、いわば将来の収益を生み出す経営資源
  • 資源の使用量として毎年計上される費用が減価償却費
  • 主な減価償却費の計算方法として、定額法と定率法がある
6 管理会計 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
18 損益分岐点分析
  • 損益分岐点とは、ある事業を個別でみたときに最終利益がプラスマイナスゼロになる売上高(採算点)のこと
  • 損益分岐点が低い場合には実際の売上高が小さくても赤字にならず、余裕がある事業と言える
19 原価生産
  • 直接原価計算では「変動費」「固定費」の概念を導入し、「変動費」のみを製品原価とし、「固定費」は期間費用として処理する
  • どの製品やサービスに帰属するか明確でない間接費については、その発生と関係の深い活動を間接費の配賦基準とし、できるだけ正確なコスト(原価)を計算する目的で生み出されたのがABC(活動基準原価計算)だ
20 マネジメント・コントロール
  • 分権化した組織を、全社目標達成に向けて効果的に業務遂行さでることがマネジメント・コントロールの役割
  • コントロール・プロセスを確実に機能させていくためには、適切な管理責任者の設定と管理会計の知識、そして人間への深い洞察が必要
第4部 ファイナンス =========================================================================
1 企業経営と企業財務 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 企業経営と企業財務
  • 企業経営における財務の役割は、経営目標の実現のために、①どのような投資対象にいくら投資するか、②どのような手段で必要な資金を調達するか、を判断し実行すること
  • そのためには、金融市場に関する理論であるファイナンス理論の理解が不可欠
  • 企業会計は過去と現在を扱い、企業財務は未来を扱う
2 ファイナンスの基本理念 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2 ファイナンス理論の体系
  • ファイナンス理論は、投資理論(インベストメント)と企業金融理論(コーポレイト・ファイナンス)の2分野で構成
  • 投資理論は余剰資金の運用に関する理論
  • 企業金融理論は金融市場からの資金調達に関する理論
3 金銭の時間的価値:現在価格
  • ファイナンスでは、「金銭には時間的価値がある」、つまり、「今日の1円は明日の1円よりも価値がある」と考える。
  • 「今日の1円は明日の1円よりも価値がある」理由:①今日の1円は銀行に預金すれば金利を稼ぐことができる。②明日の1円は今日の1円に比べて不確実である。
  • 「現在価値(Present Value)」・・・将来受け取る金銭の、今日の時点での価値のこと
4 DCF法
  • ファイナンスでは、資産の価値を「その資産が将来生み出すキャッシュフローの現在価値」としてとらえる。
  • キャッシュフローの現在価値を算出するときの用いるのかDCF法(Discounted Cash Flow Method):割引キャッシュフロー法)
3 投資の意思決定 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
5 投資評価のさまざまな方法
  • 代表的な投資の意思決定方法:①NPV法、②IRR法、③ペイバック法
  • ①②はキャッシュフローや金銭の時間的価値の考え方が反映された方法
  • ③はファイナンス理論に基づいていないが、直観的に理解しやすく、広く使われている
  • NPV(Net Present Value:正味現在価値)法・・・投資により生み出されるキャッシュフローの現在価値(PV)と初期投資額を比較することで、その投資を評価する
  1. 投資により生み出されるキャッシュフローを予測する
  2. キャッシュフローの現在価値を計算する
  3. NPVを計算する
  4. MPVが生なら投資、負なら投資しない
  • IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)法・・・IRRとは投資の利回りのこと、同程度のリスクを持つ投資案件の利回りと当該投資機会の利回りを比較することで投資を評価する
  1. ハードル・レートを設定する
  2. 投資により生み出されるキャッシュフローを予測する
  3. IRRを計算する
  4. IRRがハードル・レートより大きければ投資を行い、小さければしない
  • ペイバック(回収期間)法・・・「初期投資額は特定の期間内(カットオフ期間)に回収されるべきだ」という考え方に基づいた方法
6 損益分岐点の効果(1):ポートフォリオ理論
  • 投資のリスとは不確実性のことで、予想される投資利回りの標準偏差(または分散)で表される
  • 投資家は、多くの資産に分散投資する(ポートフォリオを組む)ことにより、投資のリスクを低減させることができる
7 損益分岐点の効果(2):効率的フロンティアと資本市場線
  • この世に存在するすべてのリスク資産を組み合わせたポートフォリオの期待利回りとリスクをプロットしたとき、その上縁部分を効率的フロンティアと言う
  • 無リスク資産が存在する場合、すべての投資家は効率的フロンティアの1点であるマーケット・ポートフォリオと無リスク資産を組み合わせた、資本市場線上のポートフォリオに投資する
8 損益分岐点の効果(3):CAPM(資本資産価格モデル)
  • CAPM(Capital Asset Pricing Model:基本資産価格モデル)は資産へ投資することのリスクと期待利回りの関係を定量化するモデルで、投資家の間で広く利用されている
  • 個別資産のリスクはβで表され、マーケット・リスクプレミアムと無リスク資産利回りから、個別リスク資産の期待利回りが求められている
4 資金調達と資本政策 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 企業の資金調達手段
  • 近年、金融の自由化と国際化の流れの中で、大企業を中心に資本調達手段が多様化
  • 最大の変化は、社債やCPの発行といった、市場から直接資金を調達する直接金融の手段が増加したこと
10 資本コスト
  • 企業は借入れに対しては「利息」というコストを、株式に対しては「配当」と「値上がり益」というコストをかけて資金を調達
  • 加重平均資本コスト(WACC)とは、企業が1円調達するのに何%のコストがかかっているかを表すもの
11 株式資本コストの推定
  • 株主資本コストは、投資家の期待利回りと言い換えることができる。
  • 株主資本コストを推定するときには、リスクと期待利回りの関係を示すCACPおよび将来にわたる配当の現在価値をもとに算出する配当割引モデルが利用されることが多い
12 市場の効率性
  • 世間にある情報をもとに恒常的に利益を上げることはできない、という考え方を「効率的市場仮説」と言う
  • 効率的市場仮説には、ウィーク、セミストロング、ストロングの3フォームがある
  • 効率的市場仮説に基づき、最初から市場平均を上回るのではなく、市場並みの利益を目指す運用のことをパッシブ運用と言う
13 企業の最適資本構成(1):理論
  • モジリアニ=ミラーの命題は、完全市場においては、企業の負債と株式資本の構成比は、企業価値に影響を与えないことを示した
  • 多くの前提を置いてはいるものの、この命題から最適資本構成に至る理論を理解することは、経営者が自社の資本構成を決定するうえでの手助けになる
  • モジリアニ=ミラーの命題の前提となる完全市場の定義
  1. 取引される証券にかかわる情報は市場参加者のすべてに一様にコストなしに伝わる
  2. 資本市場への参入障壁がなく、またどの市場参加者も価格に影響を与えるほどの力は持っていない
  3. 資本市場への参入に伴うコストはなく、証券の取引は自由に行われる
  4. 税制は存在しない
14 企業の最適資本構成(2):実践
  • 企業は、負債を増やせば節税効果により企業価値が高まる
  • しかし、極端な負債の増大は倒産リスクが高まるため、負債調達コストが上昇し、企業価値が減少
  • これら二つの効果の分岐点となるのが最適資本構成点
15 配当政策
  • 完全市場の仮定の下では、株式に対する利回りは、配当で還元しても株の値上り益で還元しても同じということになる
  • しかし現実には、税の存在や投資家と企業との情報や投資機会が不均等であるため、配当政策は企業価値に影響を与える
  • したがって、経営者はこれらの問題を総合的に考慮して配当政策を決定しなければならない
5 企業価値 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
16 フリー・キャッシュフロー
  • フリー・キャッシュフローとは、資金提供者(債権者と株主)に理論的に帰属するキャッシュフロー
  • フリー・キャッシュフローの現在価値が(債権者と株主にとっての)企業価値になる
17 企業価値の算出
  • 企業価値とは、理論的にはその企業が将来生み出すであろうキャッシュフローの現在価値
  • 企業価値の算出方法として、会計上の利益をもとに推定する方法と、企業の生還価値により推定する方法がある
18 株式評価モデル
  • 自社の株価がどの程度の水準にあるべきかを客観的に知っておくことにより、企業経営者は機動的な財務戦略をとることが可能である
  • 理論株価を算定する方法と配当を利用する配当割引モデルがある
6 今後の企業財務 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
19 EVA
  • EVAは、単年度の税引き営業利益から、過去の投下総資本に加重平均資本コスト(WACC)を掛けた「資本コストの実額」を差し引いたキャッシュフローベースの指標で、単年度業績評価などに利用される
  • EVAを経営指標として取り入れ、企業価値の増大に成功している企業もある
20 オプション理論の基礎
  • オプションとは、ある資産(株式や債券など)を将来の定められた時点に一定の株価で売買できる権利(義務ではない)で、保険のようなもの
  • オプションの売り手が受け取るプレミアムの計算方法として、ブラック=ショールズのオプション価格式が有名
第5部 人・組織のマネジメント =================================================================
1 企業経営と人・組織のマネジメント --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 企業経営と人・組織のマネジメント
  • 人・組織のマネジメントは、戦略目標の達成という企業の目的と、生活維持や自己実現などの個人の目的とをうまく適合させ、競争優位の源泉を築くことを目指している
  • 人・組織のマネジメントを理解し身につけるには、人の特徴や行動のメカニズムについて把握する必要がある
  • 企業の代表的な経営資源:「ヒト」「モノ」「カネ」
  • かつては「モノ」と「カネ」だけで「ヒト」は重視されなかったが、今では2つの理由で「ヒト」のマネジメントがクローズアップされるようになった
  1. 企業が環境変化に対応するには「ヒト」の能力が必要
  2. 企業の競争優位の源泉が、設備や資金などから知恵や知識へとシフトしつつある
  • 経営資源としての人の特徴
  1. 人には意志や感情、欲求がある
  2. 人の能力は向上し、時には低下する、また能力の種類も変化する
  3. 意志、感情、欲求、能力などは、「変えよう」と決めてもすぐに変えられるものではない、無理に変えようとすると、抵抗が生じることも多い
  4. 意志、感情、欲求、能力などのあり方や変化の程度には個人差がある、同一人物でも注目するタイミングによって、感じ方や欲求の程度が異なる場合がある
  5. 意志、感情、欲求、能力などの組み合わせに基ずく何らかのメカニズムによって、人の行動はある程度決まる
  • 行動メカニズムはあるが個人の考え方や価値観は多様、多面的な視点から様々な可能性を予測することが大切
2 人・組織のマネジメントに影響を及ぼす要因
  • 人・組織のマネジメントは、経営理念やビジョン、経営戦略との整合性を図ることが重要
  • 労働市場、法的規制、労働組合、経済状況、技術的進歩、競合他社などの外部環境からの影響に留意しながら、柔軟に対応することが必要
3 組織行動学と人的資産管理
  • 人・組織のマネジメントには、部下の管理やリーダーシップなどを扱う組織行動学(OB)と、人員配置や評価制度などを扱う人的資源管理(HRM)という2つの領域がある
  • いずれも「人の行動メカニズム」に基づいており、両者の具体的な施策間で整合性を図ることが重要
  • 組織行動学(OB:Organaization Behavior)は2つの側面から考える
  1. 個人、集団、組織:人の行動は、「個人」か、「集団」(目的をもった個人の集合)か、「組織」(目的をもった集団の集合)かによって異なる
  2. 認識、行動:人や組織に働きかけるときには、まずその場の状況を認識し、それからとるべき行動と、それが他者や組織に与える影響について考えた上で行動を起こす
  • 人的資源管理(HRM:Human Resource Management)は4つの要素から構成
  1. HR(Human Resource)ポリシー:企業が経営理念をもとに戦略を遂行し、ビジョンを表現していくために、組織と個人がどうあるべきかを示すもの
  2. 組織構造:HRポリシーに基づいて、個々の構成員をどのように組み合わせて戦略を遂行させるか決めたもの
  3. HRシステム:HRポリシーに基づいて、個々の構成員をどのように活用・管理していくかを決めたもの、HRシステムはさらに「人員配置」「報償」「評価」「能力開発」に分けられる
  4. 組織文化:組織構成員が共有する信念、価値観、行動規範の集合体のこと
2 リーダーシップ ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
4 リーダーシップとマネジメント
  • リーダーシップとマネジメントは異なる機能を果たすもので、相互に補完しあう関係
  • ハーバードビジネススクールのJ.コッター教授の理論・・・経営陣やマネージャーに求められる2つの機能
  1. リーダーシップ(変革を推し進める機能):①長期的なビジョンを提示する、②ビジョンを伝達することにより、メンバーを統合する、③メンバーの動機づけを行う
  2. マネジメント(効率的に組織を運営する機能):①短期的な計画や予算を立案する、②組織構造の設計、人員配置、詳細計画のコミュニケーションなどを行う、③予算や実績管理などを行い、問題解決を図る
5 エンパワーメント
  • エンパワーメント(Empowerment)・・・組織構成員の自律的な行動を促すために用いられるリーダーシップ技法のひとつ、通常「権限移譲」と訳される、定義は「与えられた目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する”力”を与えること」
  • エンパワーメントを有効に活用するには、構成員に自立性を促すと同時に、この行動を制御することも必要
6 パワー
  • 技術や社会、経済が急速に変化するなかで企業が目標を達成するには、相互依存関係にあるステークホルダーとの協力が不可欠
  • 利害が対立することもあるステークホルダーと良好な関係を維持するために、{パワー」(人や組織の行動に影響を与える力)を適切に用いる必要がある
  • 社会学者ジョン・フレンチとバートランド・ラーベンによる5つのパワー
  1. 強制力・・・受け手にとって苦痛になるものを与えること、例:罰則
  2. 報酬力・・・受け手にとって励みを与えること、例:インセンティブ
  3. 正当権力・・・受け手に対して影響を及ぼすことができる社会的地位の高さ、例:公式の地位
  4. 専門力・・・受け手が信頼することができる優れた専門性の高さ、例:専門知識
  5. 同一視力・・・受け手にとって魅力ある人物、理想像、例:業務経験、実績
3 個人と集団の行動 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
7 モチベーションとインセンティブ
  • 人という経営資源は、モチベーション次第で組織への貢献度合が大きく変化する
  • 組織全体の効率を高めるには、企業は従業員に対して、モチベーションを高めるためのインセンティブを用意する必要がある
  • 代表的なモチベーション
  1. 金銭的動機・・・生活に必要な金銭を得たい
  2. 社会的動機・・・一定の価値観を共有できる集団の中で社会生活を営み、その中で注目や評価を受けたり、権力を得たい
  3. 自己実現動機・・・自己を成長させたい、社会的使命感を満たしたい
  • モチベーション理論
  1. マズローの欲求5段階・・・A.H.マズローは、人間の欲求を「生理的」「安全」「社会的」「尊厳」「自己実現」という低次から高次への5段階にわけ、低次の欲求が満たされると高次の欲求へと移行すると考えた
  2. マグレガーのX理論・Y理論・・・D.マグレガーは、人間をX理論とY理論で説明、X理論:「人間は本来怠け者で、責任を回避しようとするものだ」、Y理論:「人間は本来勤勉で、進んで仕事を行い、責任を取ろうとするものだ」、近年ではX理論に基づいて動機付けを考えることが必要と言われている
  3. ハーズバーグの動機づけ・衛星理論・・・F.ハーズバーグは、満足をもたらす要因と不満をもたらす要因は別で、前者は動機づけ要因、後者を衛星要因と呼んだ、衛星要因に手を打っても不満は解消されるが、満足感やモチベーションは得られない
8 集団のメカニズム
  • 集団の「行動」と「その基本原理」は、個人のそれとは違う
  • 集団をとらえる6つの視点
  1. 規範・・・集団の構成要因で共有する行動基準
  2. 役割・・・集団において期待される行動様式
  3. 地位・・・集団における相対的な位置づけ
  4. 集団の規模・・・集団の構成員数、多ければ多様な意見が得られ、少なければ行動が迅速になる
  5. 多様性・・・集団の構成員の組み合わせの多様さ
  6. 凝集性・・・集団が構成員を引きつけ、その集団の一員であり続けように動機付ける度合い
  • 集団における問題「グループシンク」は集団の凝集性が高い場合、カリスマリーダーの間違いを誰も止められない
  • 企業には「公式集団」以外に、個人的関係からなる「非公式集団」があり、非公式集団は公式集団の行動や業績に影響を及ぼす
9 チーム・マネジメント
  • 得られる成果が構成員個々の業績達成能力の総和よりも大きくなる集団を「チーム」と呼ぶ(通常の集団は業務達成能力は構成員の総和以上にならない)
  • チームは集団の一形態であるが通常の集団と違い、チームの構成員は個人責任だけでなく相互責任を負っている
  • 集団の発展の5段階
  1. 形成期(Forming)・・・集団が形成される
  2. 激動期(Storming)・・・議論・緊張・衝突が生まれる
  3. 規範形成期(Norming)・・・構成員が規範をつくり出す
  4. 実現期(Performing)・・・集団として機能する
  5. 終了期(Adjourming)・・・集団が解散していく
10 コミュニケーション
  • コミュニケーションとは、送り手から受け手への情報の伝達し、その意味の共有すること
  • コミュニケーション・プロセス・・・「記号化」「伝達」「解読」「フィードバック」の4プロセス
  1. 記号化・・・メッセージを記号に変換すること、①言語:話す、聞く、書く、読むなど、②非言語:表情、態度など
  2. 伝達・・・さまざまなチャネル(伝達経路)を通してメッセージを受けてに伝えること、ビジネス上の公式メッセージは社内のルールに則して正規のチャネルに乗せることが重要
  3. 解読・・・受け手が記号化されたメッセージの意味を読み取ること、送り手と受け手は、経験・地位・役割等が違うため、メッセージが完全に同じになることは稀
  4. フィードバック・・・受け手が解読したメッセージを送り手と共に確認すること、ポイントを繰り返したり、言い換えたりして確認
  • コミュニケーションの落とし穴
  1. 送り手の問題:「フィルタリンク」・・・好意的に受け止めてもらうために、送り手が情報を操作(悪い話をしないなど)
  2. 受け手の問題:「選択的認知」・・・自分の関心や期待などを反映させた解釈をする
  3. 双方の問題:「文化的差異」・・・文化的な背景が違うと、同じ単語やゼスチャーが異なる、「感情表現」・・・極端な感情表現は、客観的な思考過程を無視し感情的な判断をしがち
11 コンフリクト
  • コンクリフト(対立・軋轢)とは、相反する意見、態度、要求などで、お互い譲れない緊張状態が生じること
  1. コンクリフトのプラス面:競い合うことによる意欲の高まり、意見交換により互いの理解が深まる、当初の意見を発展できる、新たな視点や本質的な問題が発見できる
  2. コンクリフトのマイナス面:不快感を味わう、情報が正しく伝達されず、意思決定が歪む
  • コンクリフトのマネジメント:ハーバード・ビジネススクールのジェームス・ウェア、ルイス・バーンズ)
  1. コンクりフトが個人および組織に及ぼしている効果:コンクリフトがプラス、マイナス、どちらの効果が大きいが分析する
  2. コンクリフトのパターン:コンクリフトのパターンをつかみ、コンクリフトの根本原因を探る
  3. 実質的問題と感情的問題:組織では感情を表しにくいため実質的問題にすり替えられている可能性がある
  4. コンクリフトの根底にある要因:①外的要因・・・時間的制約、予算、資源配分など、②個人的要因・・・対抗意識、相性、仕事上のスタイル、ストレスの許容度など
4 組織と人事システム -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
12 組織文化と企業経営
  • 組織文化とは「組織構成員が共有する信念、価値観、行動規範の集合体」
  • 組織文化の機能・・・①判断や行動の指針、②情報伝達の簡素化、③個人の動機づけ
13 組織設計
  • 組織設計とは、企業戦略を遂行するために個々の業務をどのように組み合わせ、どのように行うかを決定すること
  1. 「組織は戦略に従う」・・・アメリカの経営史学者A.D.チャンドラーの言葉
  2. 組織設計は「組織図」で表される静的な側面だけでなく、業務プロセスや意思決定プロセスなどの動的な側面も大切
  • 組織構造の決定的要因
  1. 分業と協業・・・ある程度までの分業は効率化に役立つが、過度の分業は、構成員のモチベーション、業務効率の低下させる
  2. 指揮命令系統・・・指揮命令系統に一貫性と明確さがとれているか
  3. 管理範囲・・・管理範囲とは、一人のマネージャーが統制できる構成員の数、業務の複雑さ、マネージャーと部下の能力、情報収集の難易度を考慮して決める、管理範囲は広すぎると統制がきかず、狭すぎると階層が増えて意思決定に時間がかかる
  4. 意思決定権限・・・「集権化」と「分権化」のバランスが必要
  5. 分化と統合・・・分化、統合の目的は、いづれも組織の付加価値と効率を高めること
14 組織形態
  • 代表的な組織形態、「ヒエラルキー型組織」、「マトリクス型組織」
  • ヒエラルキー型組織:機能型組織
  1.  戦略を遂行していく際の機能ごとに構成された組織
  2.  例:製造、営業、研究開発等
  3.  専門的な知識を持った人材が育成できる
  4.  部門間で機能の重複がないので効率的
  5.  幅広い知識を持ったリーダーが育ちにくい
  6.  組織間のコンクリフトが起こりやすい
  7.  意思決定に時間を要す
  • ヒエラルキー型組織:事業部制組織
  1.  その組織が生み出す成果に焦点を当てた組織
  2.  製品、市場、顧客、地理的条件を基準に決める
  3.  責任の所在が明確で意思決定がはやい
  4.  管理職マネジメント・スキルを磨きやすい
  5.  事業部間での競争が強すぎると、全社的な協力ができない
  • マトリクス型組織
  1.  機能別組織と事業部制組織を組み合わせたもの
  2.  指揮命令系統が複雑になる
15 人的配置
  • 人員配置とは、企業の戦略を遂行するために必要な人材を確保すること
  • 人材配置には短期的な視点だけでなく長期的な視点も必要
  • 人材配置は組織全体へのメッセージでもあり、メンバーのモチベーションに影響を与える
  • 人材調達には、金銭的コスト(育成費用、採用費用等)と時間的コスト(育成時間)があり、人材調達方法を決める際は、両方のコストを考慮することが必要
16 報償
  • 報償とは、給与やボーナス、福利厚生など、従業員の企業への貢献の対価として、企業から従業員に提供させるもの
  • 報償の3つの基本要素
  1. 報償基準・・・「何に対して」報償を支払うか示したもの、例:能力、職務、年齢、業務の成果など
  2. 報償項目・・・「どのように」報償を支払うか示したもの、例:給料、福利厚生、ストック・オプション
  3. 報償水準・・・「だれにいくら」報償を支払うか示したもの、「外部競争力」(他企業に引き抜かれない)、「内部公平性」(従業員間のバランス)を考慮して決める
  • 報酬項目の種類
  1. 基本給と手当・・・基本給は最も重要で手当は基本給を補完するもの
  2. インセンティブ・システム・・・目標を達成した場合などに支払われるもの、例:プロフィット・シェアリング(一定の基準に従って利益を配分)、ストック・オプション(自社株式を購入する権利を与える)
  3. 福利厚生(フリンジ・ベネフィット)・・・「その企業に所属していることによって得られる特典のすべて、例:退職金、年金積立、優遇ローン、健康保険、社宅、独身寮、各種施設の法人割引
17 評価
  • 評価の目的は、HRシステムの最適化を図るための情報収集と、従業員とのコミュニケーション
  1.  情報収集・・・評価結果を分析することにより、人員配置、能力開発、報償などのHRシステムを最適化
  2.  コミュニケーション・・・評価結果を従業員にフィードバックすることにより、期待や改善点を伝える
  • 評価方法の設計は、「何を」(評価項目)、「誰が」(評価者)、「どのくらいの期間で」(評価期間)評価するかを考える
  • 評価に関する留意事項
  1.  ハロー(後光)効果・・・特定の項目についての評価が総合的な評価に影響を与えること
  2.  中心化傾向・・・潜在的に最高の評価や最低の評価をさけること(評価基準が明確になっていないとき生じやすい)
18 能力開発
  • 従業員の能力開発は企業にとっての投資
  • 企業経営を担うビジネスリーダーの能力は、①ビジネス・フレームワーク、②コンセプチュアルスキル、③ヒューマン・スキル、④態度、⑤行動という5つの基本要素に、意識/心的要因を加えたものによって総合的に表すことができる。
  1. ビジネス・フレームワーク・・・経営に関する問題の解決に必要な思考、分析の枠組み
  2. コンセプチュアル・スキル・・・状況を構造化し、問題の本質を把握し、最前の解決策を導き出す能力
  3. ヒューマン・スキル・・・組織においてプランを実現するための必要な非定型的な人間関係力
  4. 態度・・・現在の行動に先立つ思考および経験が表出されたもの
  5. 行動・・・意識や心的要因、態度をベースにして、特定の状況に応じられる行動の特性
  • キャリアとは、人員配置によって形成される業務経験のつながり
  1. 従業員は自分のキャリアを、自分で考えることが必要
  2. 企業は、個人のキャリア・デザインに関して最低限必要な情報や機械を提供する
5 これからの人・組織のマネジメント --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
19 変革のマネジメント
  • 変革のプロセスの3段階:社会心理学者 クルト・レビン・・・①解凍、②移動、③再凍結
  1. 解凍・・・メンバーに変化の必要性を理解させ、現状を打破して、変革へ向けて準備させる段階
  2. 移動・・・変化のための具体的な方策を実施し、新たな行動や考え方を学習させていく段階
  3. 再凍結・・・新しく導入された変化を定着させる段階
  • 変革に対する抵抗を克服するには、まず原因を突き止め、それに応じた対策を講ずること
20 組織学習
  • 「学習する組織」とは、自己変革組織のように、変革の力を内在化させた組織を概念化したもの
  • 「学習する組織」を実現させるための要素「ダブルループ・ラーニング」、「5つのディシプリン」
  • ダブルループ・ラーニング:ハーバード・ビジネススクールのクリス・アージリス・・・学習プロセスは2形態「シングルループ・ラーニング」(問題に対して既存の目的達成のため軌道修正する)、「ダブルループ・ラーニング」(問題に対して既存の目的そのものを疑う)あり、学習する組織を実現するには後者の考え方が不可欠
  • 5つのディシプリン:マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ
  1. システム思考・・・独立した事象にとらわれずに、各要素間の相互依存症、相関関連性に着目し、全体像とその動きをとらえる思考方法
  2. 自己実現と自己研鑽・・・自らのビジョンや欲求がなにであるか探り続けると同時に、現状を見極めることによって両者のギャップを認識し、ビジョンや欲求の実現に向けて行動すること
  3. メンタル・モデルの克服・・・メンタル・モデルとは物事の見方や行動に大きく影響を与える固定観念や暗黙の前提、「学習する組織」はメンタル。モデルの打破するための取り組みが必要
  4. 共有ビジョンの構築・・・各個人のビジョンから共有されたビジョンを導くことにより、組織の構成員が心底望む将来像を建築すること
  5. チーム学習・・・学習の基礎単位は個人ではなくチーム、構成員間の対話を通して複雑な問題点を探究することにより、個人で考える時よりも優れた解決方法の発見につながる
第6部 IT ================================================================================
1 企業経営とIT ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 企業経営とIT
  • ITは意志決定や戦略遂行活動の質・スピード・正確性・効率性を高めることに不可欠
  • 戦略立案や知識・ノウハウの共有のIT活用例
  1. 経営情報システム(MS:Manegement Information System)
  2. 意思決定支援システム(DSS:Decision Support System)
  3. ナレッジ・マネジメント・システム(KMS:Knowledge Manegement System)
  • 価値創造活動に書かわるIT活用例
  1. グループウェア
  2. ERP(Enterprise Resouce Planning)
  3. 電子データ交換(EDI:Electrnoc Data Interchange)
  4. CALS(Commerce at Light Speed)
  5. EC(Erectronic Commerce)
  6. サプライチェーン・マネジメント(SCM:Supply Chain Manegement)
  7. 電子受発注システム
  8. 自動倉庫システム
  9. CIM(Computer Integrated Manufacturing)
  10. CAD/CAM(Computer Aided Design/Manufacturing)
  11. FMS(Flexible Manufacturing System)
  12. CRM(Customer Relationship Manegement)
  13. SFA(Sales Force Automation)
  14. POSシステム
  15. CTI(Computer Telephony Integration)
  16. 遠隔診断
  17. 保守管理システム
2 IT利用の進化
  • 第1段階:局所的応用
  1. コスト削減とサービスの改善
  2. 課題:事業目標の明確化とIT活用分野の認識
  • 第2段階:内部統合
  1. 業務の効率性向上、情報の共有化によるメリットの実現
  2. 課題:内部統合についての理念の明確化
  • 第3段階:事業プロセスの再構築
  1. 市場における競争地位の向上
  2. 課題:戦略目標の明確化、事業プロセス再構築の本質の明確化
  • 第4段階:事業ネットワークの再構築
  1. 新しい能力と技術の向上、市場における競争地位の向上
  2. 課題:バーチャル組織の概念化、事業ネットワーク再構築の本質の明確化
  • 第5段階:事業ドメインの再定義
  1. 新しい市場機会の発見、潜在的な脅威への対抗、市場における競争地位の向上
  2. 課題:自社の事業ドメインの再考、新しい事業領域の明確化
  • 第6段階:新しいビジネスモデルの創造
  1. インターネットによる新しいミジネスモデルの創出
  2. 課題:インターネット上のビジネスルールの明確化と戦略的活用
3 技術進化のとらえ方
  • 技術が進歩し人の仕事を変える時、軋轢を最小限に留めるために参考となるモデル「解凍・移動・再凍結」
  1. 解凍:組織メンバーに、新しい経営に必要な変化の方向性を理解させ、その準備をさせるステップ
  2. 移動:理解した変化の方向性に向かって、新しい経営技術・制度・業務の体系に必要な行動や考え方を学習していくステップ
  3. 再凍結:新しく導入された変化を定着させるステップ
4 情報リテラシーと情報構造
  • リテラシーとはもともと読み書きの能力、教育や教養のこと、情報リテラシーとは情報活用能力
  • 情報インフラの分類
  1. 階層型情報構造・・・組織の枠組みが規定され、その枠内でのみ情報が取り扱われる
  2. 共有型情報構造・・・複数の組織間で情報は共有されるが、その情報にアクセスできる組織は規定されている
  3. 創造型情報構造・・・企業や組織がネットワーク上に置いた独自情報を、他の企業が自由に活用できる。これにより、ビジネス機会の拡大や生産性の向上などが期待できる
  • 情報処理ツール・・・ワープロソフト、表計算ソフト、データベースソフト、プレゼンテーションソフト、電子メール、電子ペーパー、グループウェア
2 業務システムの革新 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
5 BPR
  • BPR(Business Procedd Re-engineering)とは既存のビジネスプロセスを見直し、仕事をやり方を抜本的に変更すること
6 ERP
  • ERP(Enterprise Resouce Planning)とは統合データベースによって企業で発生する情報を一元化する情報システム
  • ERPの基本的な機能
  1. 大福帳型の統合データベース
  2. リアルタイム処理
  3. 低コストかつ短期間でできるシステム開発
  4. オープン対応、マルチベンダー対応
  5. グローバル対応
  • ERPがもたらすもの
  1. リエンジニアリング
  2. ロジスティックの全社最適化
  3. ビジネススピードの向上
  4. グローバル化の推進
7 サプライチェーン・マニジメント
  • サプライチェーン・マネジメントとは、開発・調達・製造・配送・販売という供給者から消費者までを結ぶ一連の業務のつながり(サプライチェーン)を、統合的な視点から見直し、プロセス全体の最適化や効率化を図るための経営管理手法
  • 「制約理論」(TOC:Theory Of Constrains)とはSCMを支えるオペレーション理論:イスラエルの物理学者E.M.ゴールドラト
  • TOCの、キャッシュフローを生む3つの条件
  1. スループット(売価から変動費を引いたもの、貢献利益)を増大させる
  2. 運転資本を低減する
  3. 経費(資材費以外の総経費、人件費を含む)を低減する
  • TOCの5つのステップ
  1. 制約条件を見つける
  2. 制約条件を徹底的に活用する
  3. 制約条件以外を制約条件に従属させる
  4. 制約条件の能力を向上させる
  5. 惰性に注意しながら繰り返す
8 ロジスティックス
  • ロジスティック活動の目的:市場、配送、生産、調達の効率化による低コスト化
  • QR(Quick Response)・・・「適切なものを、適切なところに適切な時に、適切な価格で提供する」ために、サプライチェーンの無駄を削減する
  • ECR(Efficient Consmer Response)・・・卸業者、小売業者が協力して、品揃え、補充活動、販売促進活動、新消費開発・導入を効率的に行い顧客満足の最大化を図る
  • ロジスティックを支える在庫管理に関する技術
  1. CRP(Continuous Replenishment Program)・・・ベンダー主導型センター在庫管理
  2. VMI(Vendor Managed Inventory)・・・ベンダー主導型店舗在庫管理
  3. RTI(Real Time Inventory)・・・小売業における発注や商品受入れ、売上、返品など単品別の商品情報を管理し、単品別在庫情報を常時参照できるシステム
  • ロジスティック全般の新技術
  1. ASN(Advanced Shipping Notice)・・・事前出荷明細。商品を出荷するとき、到着に先立ち出荷内容を連絡しておく
  2. クロス・ドッキング・・・流通センターの入荷ドッグで受け入れた商品を、センターで在庫保管せず、仕分けコンベアを経由してそのまま出荷ドッグまで運ぶ
  3. DSD(Direct Store Delivery)・・・メーカーや卸業者が納品数量を決定し、小売業者の流通センターを経由せずに、小売業者の店舗に直接納品することを支援するシステム


3 インターネット ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 インターネットのインパクト
  • インターネットは既存のビジネスのやり方を変えるとともに、バーチャル市場を提供することによって新しいビジネスモデルを生み出している
10 インターネット・ビジネス
  • インターネットビジネスの成功条件・・・ビジネスモデルの5つの要素モデル
  1. 市場モデル・・・需要と供給の性質や、顧客の特質はどうか
  2. 戦略モデル・・・どういう顧客に何をどう魅力づけして、どういう製品・サービスを提供するか
  3. 競合モデル・・・ライバルや新規参入者に対して、どう競争するか
  4. オペレーション・モデル・・・戦略を支えるためのオペレーションの基本構造を示す
  5. 収益モデル・・・事業活動の利益をどう確保するか
11 バーチャルとリアル
  • インターネット・ビジネスでは、コミュニケーションにおける情報の経済性は、現実の社会とは大きく違っている
12 マーケティングへの影響
  • デジタル・ネットワーク環境におけるマーケティング要素の変化
  • 顧客との関係
  1. インターネット上における顧客行動を識別可能
  2. コミュニケーションのカスタマイズが可能
  3. プライバシー情報への保護が必要
  • Productへの影響
  1. 情報財(音楽、書籍、ソフトウェア、記事、株、航空券、保険など)のデジタル商品化
  2. サイバー空間を活用し、顧客を巻き込んだ新商品開発が可能
  3. 製品説明などにおいてデジタル情報の利用が可能
  • Priceへの影響
  1. 価格情報提供サイトの登場で価格比較が容易にできる
  2. 価格変動がリアルタイムに反映される
  3. 消費者による価格決定(オークションなど)
  4. 消費者による価格交渉(逆オークションなど)
  • Placeへの影響
  1. 顧客との直接取引が可能
  2. 直接取引を補完する仲介サービスの登場
  3. デジタル財のダウンロードが可能になり、配送費がゼロになる
  • Promotionへの影響
  1. 顧客との直接コミュニケーションが可能
  2. 伝統的な情報の経済性を打破
13 情報時代の顧客関係構築
  • 「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」実践の4ステップ
  • 第1ステップ:顧客の特定・・・最重要顧客、重要顧客とのコンタクトのために、できるだけ詳細な顧客情報を得る
  • 第2ステップ:顧客の差異化・・・企業から見た顧客の価値や、顧客ニーズによって顧客を差別化する
  • 第3ステップ:顧客とのコミュニケーション・・・顧客とのコミュニケーション効率を高めると同時に、コスト低減を行う。自動化や低コストのチャネルを利用する
  • 第4ステップ:企業活動のカスタマイゼーション・・・企業行動の一定の部分を、顧客一人ひとりが持っている固有のニーズに適応させる
4 ナレッジ・マネジメント ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
14 ナレッジ経営と競争優位
  • ナレッジ・マネジメントの枠組み:SECIモデル・・・北陸先端科学技術大学院大学の野中郁次郎教授
  • SECIモデル・・・個人がもつ暗黙的な知識は、「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「連結化」(Combination)、「内面化」(Internalization)の4つの変換プロセスを経ることで、集団や組織の共有の知識をなる
  • 「共同化」(Socialization)
  1. 社外の歩き回りによる暗黙知の獲得
  2. 社内の歩き回りによる暗黙知の獲得
  3. 暗黙知の蓄積
  4. 暗黙知の伝授・転移
  • 「表出化」(Externalization)
  1. 自己内の暗黙知の表出
  2. 暗黙知から形式知への置換・翻訳
  • 「連結化」(Combination)
  1. 新しい形式知の獲得と統合
  2. 形式知の伝授・普及
  3. 形式知の編集
  • 「内面化」(Internalization)
  1. 行動/実践を通した形式知の体化
  2. シュミレーションや実践による形式知の体化
  • ナレッジ・マネジメントの2つの戦略
  1. 「コード化戦略」・・・情報を文字で表し、それを蓄積する
  2. 「個人化戦略」・・・コード化できない知の継承や創造を行う、専門家の保有する知識を重視
15 ナレッジ経営の要件
  • ナレッジ・マネジメントを推進していく際には、「ナレッジ・マネジメント実践の場」と「ナレッジ・マーケット」を創造することが重要
  • 「ナレッジ・マネジメント実践の湯」・・・例:メーリングリスト
  • 「ナレッジ・マーケット」・・・ナレッジの創造者(売り手)とナレッジの消費者(買い手)の間でのナレッジの移転を促す「流通機構型」と、社内公募などの「コンピテシー移動型」がある
  • ナレッジ・マネジメントを根付かせる組織の構成員の3つの要件
  1. 物事を部分だけでなく、全体の枠組みの中で客観的に捉えてその本質を把握する(システム思考を持つ)
  2. 従業員全員が自立型人材として行動し、自己実現を目指し、自己責任を負い、自己啓発を行う
  3. 状況に応じて古い世界観やイメージを捨て去り、新しいパラダイムに移行する
  • ナレッジ経営のプロセスと支援ツール
  1. 知の収集、コード化・・・グループウェア、イントラネット、インターネットなど
  2. 知の蓄積・検索・・・データベース管理システム、インターネットなど
  3. 知の解析・・・データウェアハウス、データマイニングなど
  4. 知の流通・・・インターネットなど
  5. 知の交渉・・・グループウェアなど
第7部 ゲーム理論・交渉術 ===================================================================
1 企業経営とゲーム理論 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
1 企業経営とゲーム理論
  • ゲーム理論とは、複数の当事者(プレイヤー)が存在し、それぞれの行動が影響を及ぼしあう状況(ゲーム)において各人の利益(効用)に基づいて相手の行動を予測し意思決定を行う考え方
  • ゲーム理論は、20世紀初頭に数学者のフォン・ノイマンと経済学者のオスカー・モルゲンシュタインによって基礎が作られた学問
  • ゲーム理論は、複雑な人間の行動のある1面を単純化して分析できる
  • ゲーム理論に登場する基本的な概念
  1. 「プレイヤー」・・・ゲームの参加者、個人でも組織でもよい
  2. 「利得」(Payoff)・・・ゲーム終了時のプレイヤーが手に入れるもの
  3. 「戦略」・・・ゲーム全般の選択を決めるもの、ゲームが始まる前に決める
  4. 「ゲームを解く」・・・ゲームの結果を見つけ出すこと
  • ゲーム理論の前提
  1. 各プレイヤーがゲーム理論を熟知している
  2. 各プレイヤーが合理的な戦略を立て、理にかなっている(理にかなわない無茶苦茶なプレイヤーはいない)
2 ゲーム理論の基礎概念 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2 ゲームの累計
  • 意思決定のタイミングによる分類
  1. 交互進行ゲーム・・・各プレイヤーが交互に判断して行動する
  2. 同時進行ゲーム・・・各プレイヤーが同時に判断して行動する
  • プレイヤーの人数による分類・・・2人、3人・・・多人数
  • 利害衝突度合による分類
  1. ゼロサム・ゲーム・・・あるプレイヤーの利益が増せば、その分だけ他のプレイヤーの損失が増す
  2. プラスサム・ゲーム・・・あるプレイヤーの利益が、かならずしも他のプレイヤーの損失とならない
  3. マイナスサム・ゲーム・・・両者の利得合計がマイナスになるゲーム
  • 情報量による分類
  1. 情報対称ゲーム・・・ゲームのルールや自分の置かれている状況などを、各人が完全に把握している
  2. 情報非対称ゲーム・・・ゲームのルールや自分の置かれている状況などを、必ずしも把握していない
3 同時進行ゲーム(1):絶対優位の戦略・絶対劣位の戦略
  • 同時進行ゲームを解くには、選択肢によって自分と相手の利得がどうなるかを一覧表にした「利得マトリクス」を作成するとよい
  • 自分が絶対優位の戦略がある場合はそれでよしとし、相手が絶対優位の戦略がある場合場合は、相手がそれを取ることを前提に考察を進める
4 同時進行ゲーム(2):囚人のジレンマ
  • 「囚人のジレンマ」(Prisoner's Dilemma)とは
  1. AとBという2人の犯罪容疑者(プレイヤー)が登場
  2. 2人はある犯罪に関連した別件容疑で逮捕された
  3. 罪を犯した可能性が高いが、決定的な証拠がないため、2人は別々の部屋で尋問にかけられる
  4. AとBがとりうる選択肢は、自白するか、自白しないの2つ
  5. 2人とも自白した場合は懲役5年
  6. 2人とも自白しなかった場合はともに懲役2年
  7. 一方だけが自白して他方が自白しなかった場合、自白したほうは無罪で、他方は懲役30年
5 同時進行ゲーム(3):男女の争い
  • 「男女の争い」(Battle of Sexes)とは
  1. 夫はボクシングの試合を観に行きたい
  2. 妻はミュージカルを観たい
  3. 2人とも1人でいくより、一緒に行きたい
  • このゲームは「夫婦ともボクシング」「夫婦ともミュージカル」という二つの均衡点がある・・・「ナッシュ均衡」
  • 「ナッシュ均衡」・・・各プレイヤーの戦略の組み合わせが一度決まると、どのプレイヤーにも、自分が選んだ戦略の組み合わせから離れるインセンティブがない均衡
6 同時進行ゲーム(4):混合戦略
  • 同時進行ゲームにおいて、絶対優位・絶対劣位・ナッシュ均衡という考え方だけで戦略が定まらない場合に、さまざまな打ち手を混ぜて使うのが混合戦略
  • ある1つの打ち手のみをとることを純粋戦略
7 ミニマックス定理
  • AがBから利得を受けるゼロ・サムゲームでは、Aは自分の最小利得が最大になる戦略をとり、BはAの最大利得が最小となる戦略をとるのが最も堅実な行動
  • このとき、それぞれの戦略によって与えられる最大値と最小値は一致する、というのが「ミニマックス定理」
8 交互進行ゲーム
  • 交互進行げーむでは「ゲームの木」を書く
  • ゲームの木の末端から先端へと、各分岐点における最適戦略を「後向き帰納法」でたどることにより、最初の打ち手が見えてくる
  • 「後向き帰納法」(Backward induction)・・・ゲームの木の最後に位置するプレイヤーが選択するであろう行動を分析し、そのプレイヤーの行動を前提としてひとつ前の自分の行動を決める、というように後から順番にゲームをたどっていく方法
3 ゲーム理論の応用 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 情報非対称ゲームの考え方
  • 情報非対称ゲームにおいては、一部のプレイヤーが他のプレイヤーより情報面で優位な立場にある。
  • 非対称ゲームの分析では、各プレイヤーが相手の行動パターンや現在置かれている状況について、いくつかの可能性を考え、それぞれに確率を洗い出して考えることが必要
10 ゲームの転換
  • ゲームの性質は必ずしも固定的なものではない
  • 同時進行ゲームでは、相手が自分の戦略を宣言することで交互ゲームのように変えることが可能
  • ゲームを転換させることで、より優位な結果を導ける場合もある
4 企業経営と交渉 -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
11 ビジネスパーソンとの交渉
  • スくれた交渉者になるためには、交渉を構造的、科学的にとらえ、交渉の参加者双方が満足できる妥協点を探るさようが不可欠
  • 「交渉のうまい下手は天性」間違い
  • 「優れた交渉者はとは、相手に嫌がれるようなハードネゴシエーター」間違い
5 交渉の基礎概念 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
12 交渉の構造と類型
  • 交渉者の数による分類
  1. 2者間交渉・・・交渉の構造はシンプル
  2. 3者以上の交渉・・・交渉の構造はより複雑
  • 交渉の争点の数による分類
  1. 単一争点・・・交渉者の関係は対立的
  2. 複数争点・・・相互の妥協点を見出す余地がある
  • 交渉者の意思決定権による分類
  1. 単層的交渉・・・交渉者に意思決定権がある
  2. 複層的交渉・・・交渉者に意思決定権がない
  • 交渉者の力関係による分類
  1. シンメトリック交渉・・・交渉者の力関係は対等
  2. 非シンメトリック交渉・・・交渉者の一方が極端に弱い
13 交渉構造分析の基本理念
  • 交渉の構造を理解するための基本的概念「限界値」「BATNA」「ZOPA」
  • 限界値・・・売り手が絶対にこれ以上安くは売らない価格、買い手が絶対にこれ以上高くは買わない価格
  • BATNA(Best Altemative to Negotiated Agreement)・・・交渉相手から提示されたオプション以外で最も望ましい代替え案
  • ZOPA(Zone of possible Agreement)・・・交渉が妥協する可能性のある条件範囲
14 複数争点交渉
  • 交渉の争点が複数ある場合は、単一争点の場合と比べて時間とコストは要するが、創造的解決を図りやすい
  • 一見すると単一争点を思われる交渉でも、背後に他の争点が眠っている場合がある
  • 自分にとって有利な代替手段を見つけることができれば、新たな交渉領域としてその争点を交渉の場に提示できる
6 効果的な交渉 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
15 交渉と説得の3層構造
  • 実りのある交渉を行うためには、相手の感情を配慮し、納得のいくような論理性を持たせ、互いの利害を十分に理解しておくことが重要
  • 交渉を妥協に導く「3層構造」・・・「感情」「論理」「利害」の3つの要素
7 心理バイアス --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
16 交渉の準備プロセス-4ステップ・アプローチ
  • STEP1:交渉の構造を把握する
  • STEP2:相手の心象風景に立つ
  • STEP3:自分のミッションを確認する
  • STEP4:Wiin-Winの妥協点を探る
17 合理的な交渉を妨げる心理バイアス(1)
  • 「非両立バイアス」「総量固定の思い込み」・・・対立的で「相手の得は自分の損」といった考え
  1. Win-Winの結果に導けない
  2. 交渉相手を「一つの問題を共に解決するパートナー」と考える
  • 「立場固定」・・・最初の決断や計画を正当化しようとする考え
  1. 「立場固定」になる原因:①「埋没費用」(Sunk Cout)、②「印象管理」「メンツ」③「成功の囚人」
  2. 「立場固定」から逃れる方法:①潮時を見極めるために自らの目安(限界値)を設けておく②第3者におけるチェックシステムの構築③「意思決定の見直し手順」をつくっておく
  • 「勝者の呪縛」・・・オークションで落札した人は勝者に見えるが、一番損をした人
  1. 判断の根拠となる正確な情報をもつ
  2. 十分な情報がなければ意思決定をしない
18 合理的な交渉を妨げる心理バイアス(2)
  • 「枠付け」(Framing)・・・ものの見方が特定の方向に誘導されること
  1. 例:千円ではなく998円、1日当りコーヒー一杯分以下など
  2. 「準拠点」・・・評価の基準となる点
  3. 準拠点となりやすいものの例:過去の経験から知っている情報、先入観に合致する情報、権威者や著名人の発言(ハロー効果:Halo Effect)、一連の情報の中で最初のものと最後のもの、状況を単純化、簡素化したもの、過去の最良の状態(授かり効果:Endowment Effect)
  • 「アンカリング(保留)」(Anchoring)・・・値引き交渉をする時、最初に言う値段を思いきって安く言うと、逆の場合より安くなる。
  1. 「アンカー」(楔)・・・最初の提示のこと
  2. 「保留効果」(Anchor Effect)・・・アンカーが交渉結果に影響を与えること
  • 枠付けの転換(Reframing)・・・別の枠組みを提案し、交渉に決着をつける
8 交渉の応用 --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
19 交渉の諸戦術
  • 交渉のテクニックを理解しておくことは、自分が使うためではなく、相手のペースに巻き込まれないようにするため
  • 交渉のテクニックは局所的に勝ったとしても、長い目で見れば、トータルにプラスに働かないことが多い
  1. 「脅し」(Threat)・・・1回限りの関係で、自分にBATNAがある場合のみ有効
  2. 「瀬戸際戦術」・・・相手と自分を瀬戸際に立たせ、相手に後退を余儀なくさせるやり方
  3. 「良い警官/悪い警官戦術」(Good Cop / Bad Cop Tactics)・・・意図的に悪者をつくることで、自分は交渉相手にとって話の分かる人間だとして振る舞い、相手の妥協を引き出すやり方
  4. 「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」(Foot in the Door Technique)・・・最初の要求を承諾したら、次の要求は断りにくくなる心理を利用し、最初に簡単な依頼をし、徐々に要求をつり上げていくやり方
  5. 「ドア・イン・ザ・フェース・テクニック」(Door in the Face Technique)・・・最初の理不尽な要求をアンカーとしてぶつけ、その後譲歩したように見せながら実は不当な要求をのませるやり方
  6. 「返報性の原理」・・・ちょっとした貸しを作っておいて、お返しをしなくてはと思わせて大きな見返りを得るやり方
20 交渉スタイル
  • バランス重視型
  1. 人間関係に関する認識:重要性・大
  2. 利害関係に関する認識:重要性・大
  3. 提携、ジョイントベンチャー、合併などの交渉
  4. とるべき戦略:問題解決を目指す、または妥協する
  • 人間関係重視型
  1. 人間関係に関する認識:重要性・大
  2. 利害関係に関する認識:重要性・小
  3. 仲のいい夫婦間、友人同士、仕事仲間の交渉
  4. とるべき戦略:相手に便宜を図る、問題解決を目指す、または妥協する
  • 取引重視型
  1. 人間関係に関する認識:重要性・小
  2. 利害関係に関する認識:重要性・大
  3. 不動産お売買や市場取引、離婚した夫婦間の交渉
  4. とるべき戦略:問題解決を目指す、または妥協する
  • 暗黙の協調型
  1. 人間関係に関する認識:重要性・小
  2. 利害関係に関する認識:重要性・小
  3. 交差点でどちらの車が先に通過するかの交渉
  4. とるべき戦略:相手に便宜を図る、または妥協する

編著紹介・・・グロービス・マネジメント・インスティテュート
グロービス・グループの各事業を通じて蓄積した知見に基づき、実践的な経営ノウハウの研究・開発を進めている。書籍の出版、デジタル・コンテンツの作成、経営能力の診断テストなどを行い、社会全般の経営・ビジネスに関する知的レベルの向上を目指している。(本のカバーより)

2012年3月1日木曜日

デキる人の秘密

今回、紹介する本は、宗教の本です。
『デキる人の秘密』 アルボムッレ・スマナサーラ著 国書刊行会 2010年発行

この本を購入した理由は、以前見たテレビで、著者でお坊さんのアルボムッレ・スマナサーラさんが「仏教は宗教というより、より良く生きるための知恵」と言っているのを見て、著者に興味を持つようになりました。それで一度本を読んでみたいと思うようになり、この本と出会いました。
私なりに、この本のポイントを紹介します。
  • 相手の性格を勝手に判断することは、相手に対して侮辱的な行為
  • 人の性格判断をしたがるのは、相手を支配しようとしているから。
  • 人間関係がダメになる理由は、相手を支配しようとするから。
  • 性格判断の基準は主観的
  • 外見的な判断は差別につながる
  • 世の価値観というものは、場所や時代によって異なるので、気にする必要はない。
  • 宗教や民族に関係なく共通する社会一般般常識を守る程度でよい
  • 性格は決めつけられない
  • 性格は無限の過去からの結果
  • 仏教の、柱になる六つの基本性格
  1. 欲型・・・喜び、楽しみが中心的な人 例:欲の深い人、よく笑う人、美を好む人
  2. 怒り型・・・例:批判的な人、落ち着かない人、すぐあきらめる人、怒りっぽい人、仕事が乱雑な人、暗いイメージを持っている人
  3. 無知型・・・物事に感心を持たない人、例:社会や環境の変化に気づかない人、物事の理解が遅い人、自分をなかなか変えられない人、ヒラメキがない人
  4. 信仰型・・・単純な人 例:物事に簡単に納得する人、人をほとんど疑わない人、他人にすぐに従う人、自分の意見を言わない人、すぐに感動する人
  5. 論理型・・・わかりやすく言えば妄想型 例:論理の達人、ああでもない、こうでもないと考え続ける人、理屈をつけて反対する人、物事のさまざまな側面をとらえて、異議を唱えるのが好きな人
  6. 知識型・・・ひらめきがある人、アイデアマン
  • 仏教の目的「解脱」に向けての能力開発
  1. Lesson1 妄想をやめる・・・現実性のない思考、実効性のない思考、自分の役にたたない思考をやめる。「妄想する=能力が蝕まれる」
  2. Lesson2 時間を短くする・・・長期的な計画は妄想の産物。遠い目的に対して、「今、何をすべきか」を発見し実行する。
  3. Lesson3 一個の部品に徹する・・・自分の仕事に集中して完璧にこなす。それだけしていればよい。なんでもしっかりやろうと思わない。
  4. Lesson4 喜びを感じる・・・いつでも喜び、充実感を感じるように計らうこと。とても真剣に取り組まないといけない時でも、冗談を言ったりして楽しくやるほうがよい。脳は喜びというご褒美を欲しがっている。「必勝」「根性」など苦しい思いをしていては能力は退化する。
  5. Lesson5 慈しみを育てる・・・「火事場の馬鹿力」人は秘められた力を持っている。火事場でなくても秘められた力を使うには「慈しみの心」が必要。慈しみは仕事を楽しくし、能力を向上させる。慈しみの心:他人を配慮、人の役に立ちたいといった心
  6. Lesson6 思考を整理する・・・人に役立つ、有意義で、慈しみにもとずいた思考、これが思考の整理。思考の整理をすると心が軽くなる
  7. Lesson7 ネガティブな感情を持たない・・・欲、怒り、嫉妬、恨み、高慢、自我意識などは、堕落した感情。「あの連中に負けてたまるか」といった感情は怒り。ネガティブな感情はカラダが固くなり、動きにくくなる。
  8. Lesson8 価値観を変える・・・世の中には命をかけるほどのことはない。生まれてから死ぬまでの全ての行為は「内職」と考えると心が軽くなる。「本職」は人格向上のみ。
  9. Lesson9 執着しない・・・なにかに執着すると、進歩・発展がなくなる。人生は毎日、新しい経験、新しく学ぶことがないと損だ、と考えよう。能力とは生まれつきのものではなく開発するもの。
  10. Lesson10 できないことを恥じない・・・苦手なことはしない。能力には限界がある。人は仕事ができればそれで十分。自分の限界までやったら、それで満足すべき。人格完成・解脱は本職だから完全になるまで納得してはいけない。
  11. Lesson11 仏弟子に学ぶ・・・人格向上に努力する。こころを清らかにすることに努力する。それ以外はそこそこで十分
仏教を通して自己啓発の仕方を紹介した本で、実用的です。仏教の視点は、俗世間の視点とは違っており新鮮です。読み終えたとき、自分の視野が広がった感じがしました。

著者紹介
スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老。1945年スリランカに生まれる。13歳で出家となる。スリランカの国立大学で仏教哲学の教鞭をとられたのち、1980年に派遣されて来日。現在は、日本テーラワーダ仏教協会などで初期仏教の伝道、ヴィパッサナー実践の指導に従事されており、修行練磨の誠実温厚な人柄、的確流暢な日本語による説法で定評があります。
朝日カルチャーセンター講師の他、NHK教育テレビ『心の時代』への出演も反響を呼びました。
スマナサーラ長老は、お釈迦さまの根本の教えを通じて、仏教とは今この場で役に立ち、自ら実践し理解する智慧の教えであることを説かれています。・・・アルボムッレ・スマナサーラ長老より抜粋