2012年2月29日水曜日

カール・セーガン科学と悪霊を語る

今回、紹介する本は四半世紀前に書かれた本です。
『カール・セーガン科学と悪霊を語る』(THE DEMON-HAUNTED WORLD - SCIENCE AS A CANDLE IN THE DARK)
カール・セーガン著 青木薫薬 新潮社 1997年発行

著者は、途上国、先進国を問わず「トンデモ話」が溢れている状況を憂い、少しでも改善したいとの思いからこの本を書きました。
私は、この本により、何を信じ何を疑うべきかを学びました。
427ページ全てをまとめることは、ブログでは困難なので、ここでは、トンデモ話に騙されない方法とトンデモ話の一例を紹介します。
  • トンデモ話に騙されない方法
  1. 裏付けを取れ・・・事実が出されたら、独立な裏付けをできるだけたくさん取るようにする。
  2. 議論のまな板にのせろ・・・証拠が出されたら、さまざまな観点をもつ人たちに、しっかりした、根拠のある議論をしてもらう。
  3. 権威主義に陥るな・・・権威の言うことだからといって当てにしないこと。「科学には権威はいない。せいぜい専門化がいるだけだ。」
  4. 仮説は複数立てろ・・・まだ、説明のつかないことがあるなら、それが説明できそうな仮説をありったけ考え出そう。次に仮説を、かたっぱしから反証していく方法を考えよう。
  5. 身びいきするな・・・自分の出した仮説だからと言って、あまり執着しないこと。仮説を出すことは知識を手に入れるための手段。なぜそのアイデアが好きなのか自問してみよう。そして、他のアイデアと公平に比較しよう。そのアイデアを捨てるべき理由がないか探してみよう。
  6. 定量化しろ・・・尺度があって数値を出すことができれば、いくつもの仮説の中から一つを選び出すことができる。あいまいな定性的なものには、いちいち説明が付けられる。
  7. 弱点をたたき出せ・・・論証が鎖のようにつながっていたら、鎖の輪の一つ一つがきちんと機能しているかチェックすること。すべての鎖が機能していなければならない。
  8. オッカムのかみそり・・・「データを同じくらいうまく説明できる仮説が二つあるなら、より単純なほうの仮説を選べ」
  9. 反証可能性・・・仮説が出されたら、少なくとも原理的に反証可能か問うこと。反証できないような命題に価値はない。例:「われわれの宇宙は、もっと大きな宇宙の素粒子に過ぎない」これは宇宙の外からの情報がないと反証不可能。主張は検証できるものでなくてはならない。
  • 著者が紹介するトンデモ話
  1. 占星術
  2. バミューダ・トライアングル
  3. 雪男
  4. ネス湖の怪獣
  5. 幽霊
  6. 凶眼・・・その視線に触れると災難にみまわられるというもの
  7. オーラ
  8. テレパシー
  9. 予知
  10. サイコキネシス
  11. 千里眼
  12. 超感覚的知覚(ESP)
  13. 13は不幸な数字だという考え
  14. 血を流す像
  15. 切断されたウサギの脚をもっていると幸運が訪れるという考え
  16. ダウジング
  17. 自閉症のコミュニケーションが促進されるという主張
  18. 厚紙のピラミッドの中にカミソリを入れると切れ味が鈍らないという考え、その他「ピラミッド学のさまざまな教義
  19. 死者からの電話
  20. ノストラダムスの予言
  21. 訓練されたプラナリアの死体をすりつぶして、訓練されていないプラナリアに食べさせると、訓練内容を学習させられるという話
  22. 満月の夜には犯罪が増加するという話
  23. 手相占い
  24. 数秘学
  25. うそ発見器
  26. 彗星占い
  27. 茶の葉占い
  28. 「奇怪な」子供が生まれるのは何かの前兆だという考え
  29. イエスの磔など過去のできごとの写真
  30. 流暢にしゃべるロシアの象
  31. 感覚の鋭い人(ゆるい目隠しをされると、指先で本を読むことができる)
  32. エドガー・ケイシー(1960年代に、失われた大陸アトランティスが浮上すると予言した)をはじめとする預言者たち
  33. いかさま食餌療法士
  34. 幽体離脱体験(たとえば臨死体験など)は現代の外的経験だという考え
  35. いかさま信仰療法士
  36. ウィージャ・ボード・・・心霊術で用いられる文字・数字・記号を記した占い板
  37. ゼラニウムに感情のあることがうそ発見器で分かったという主張
  38. かつて溶け込んでいた分子を水が記憶しているという説
  39. 顔の造作や頭の出っ張り具合から性格がわかるという説
  40. 「100匹目の猿」など、何人かが信じたことは現実になるという主張
  41. 人間が自然発火して炭になるという話
  42. バイオリズムの3サイクル
  43. 永久機関
  44. 無尽蔵エネルギー
  45. ジーン・ディクソンらプロ超能力者のはずれまくる予言(ディクソンは1953年にソ連がイランに進攻すると予言、1965年には人類初の月着陸でアメリカはソ連に負けると予言)
  46. 1917年に世界は終わりを迎えるという「エホバの証人」の予言
  47. ダイアネティクス・・・有害な心象を除くことによって身体症状を治療しようとする心理療法
  48. サイエントロジー・・・米国人ロン・ハバードが1951年に始めた宗教運動で、至上の存在を否定して心理療法や自己修養を説く
  49. カルロス・カスタネダと「呪術」
  50. ノアの方舟の残存物を発見したという主張
  51. 「アミティヴィルの恐怖の館」などお化け屋敷のたぐい
  52. 現代のコンゴ共和国の熱帯雨林を、小型のプロントザウルスが歩き回っているという主張
著者紹介

カール・エドワード・セーガン(Carl Edward Sagan, 1934年11月9日 – 1996年12月20日)は、アメリカの天文学者、作家、SF作家。元コーネル大学教授、同大学惑星研究所所長。NASAにおける惑星探査の指導者。惑星協会の設立に尽力。核戦争というものは地球規模の氷河期を引き起こすと指摘する「核の冬」や、遺伝子工学を用いて人間が居住可能になるよう他惑星の環境を変化させる「テラ・フォーミング」、ビッグバンから始まった宇宙の歴史を”1年という尺度”に置き換えた「宇宙カレンダー」などの持論で知られる。・・・ウィキペディアより抜粋

2012年2月28日火曜日

マネジメント-基本と原則

今回紹介する本は、『もしドラ』で紹介された
『マネジメント-基本と原則【エッセンシャル版】』 P.F.ドラッカー著 上田惇生編訳 ダイヤモンド社 2001年発行
です。
私の手元にあるこの本は、2010年9月に出た第37刷で、息の長いロングセラーだということが分かります。

また、この本の解説本として
『別冊宝島1710_まんがと図解でわかるドラッカー』 宝島社 2010年発行
を本ブログの書く際に、参考にさせて頂きました。

以下、私なりにこの本の中身を紹介します。



序 新たな挑戦
  • 組織が機能するには、マネジメントが成果をあげなければならない
  • マネジメントは、所有権、階級、権力から独立していなければならない
  • マネジメント・ブームのコンセプト
  1. 生産性向上のための科学的管理法(サイエンティフィック・マネジメント)
  2. 組織構造としての連邦分権組織
  3. 人を組織に適合させるための人事管理
  4. 明日のためのマネジメント開発
  5. 管理会計
  6. マーケティング
  7. 長期プランニング
  • マネジメント・ブームの終わりと新しいニーズ
  1. マネージャーはイノベーションのための組織をつくり、動かさなくてはならない
  2. マネジメントは企業だけのものではなく、あらゆる組織に必要
  3. これからの課題は知識の生産性をあげること
  4. グローバル化への対応

Part1 マネジメントの使命 ====================================================================
1 マネジメントの役割
  • 組織は組織のために存在しない。組織の機能を果たすことにより、社会、個人のニーズを満たすためにある。組織は目的ではなく手段。
  • マニジメントの3つの役割
  1. マネジメントは組織の目的を果たすために存在する
  2. マネジメントは仕事を通して働く人たちを生かす
  3. マニジメントには、社会の問題の解決に貢献する役割がある
  • マネジメントには時間という特別な要素がある
  • マニジメントは明日を創造する役割がある
第1章 企業の成果----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
2 企業をは何か
  • 企業は営利組織ではない
  • 企業の目的は「顧客の創造」
  • 企業の基本的機能は「マーケティング」と「イノベーション」
  • マーケティングは顧客の欲求からスタートする
  • イノベーションは新しい満足を生み出す
  • 企業の経済的な機能として「生産性」がある
  • 利益の持つ機能
  1. 利益は成果の判定基準
  2. 利益は不確定性というリスクに対する保険
  3. 利益はよりより労働環境を生むための原資
  4. 利益は、医療、国防、教育、オペラなど社会的なサービスと満足をもたらす原資
3 事業とは何か
  • 「顧客は誰か」の問いこそ、企業の使命を定義するうえで、最も重要
  • 事業の在り方には、永遠に通用する「正解」はない。常に問い続けることが必要
4 事業の目標
  • 事業の定義を具体的に行動するために目標が必要
  1. マーケティングの目標
  2. イノベーションの目標
  3. 経営資源の目標
  4. 生産性の目標
  5. 社会的責任の目標
  6. 費用としての利益
  • 目標に必要な3種類のバランス
  1. 利益とのバランス
  2. 近い将来と遠い将来とのバランス
  3. トレードオフ関係にある目標間のバランス
5 戦略計画
  • 未来を得るには、いま意志決定をしなければならない。必要なものは、長期計画ではなく戦略計画
  • 戦略計画ではないもの
  1. 戦略計画は魔法の箱や手法の束ではなく、思考でり、資源と行動に結びつくもの
  2. 戦略計画は予想ではない
  3. 戦略計画は未来の意思決定に関わるものではなく、いま意思決定するためにある
  4. 戦略計画はリスクをなくすためのものではなく、不確実な期待に賭けるため
  • 戦略計画の実践の3ステップ
  1. リスクを伴う意思決定
  2. 体系的な組織活動
  3. 期待した成果との比較
第2章 公的機関の成果----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
6 多元社会の到来
  • 現代社会は企業社会ではなく多元社会。公的機関こそ成長部門。企業内でも成長部門はサービス部門
  • 現代のサービス機関こそマネジメントにより成果をあげる必要がある
7 公的機関不振の原因
  • 公的機関不振の3つの誤解
  1. 企業のようにマネジメントしていない
  2. 人材がいない
  3. 目的や成果が明確でない
  • 公的機関と企業の違い・・・企業は顧客から支払を受けるが、公的機関は予算により運営される
  • 予算型組織の成果は、より多くの予算を獲得すること、合理化は自分の首を絞めることになる
  • GNPの半分以上が公的機関に流れていることに気づいている経済学者は少ない
8 公的機関成功の条件
  • 全ての公的機関に必要な6つの規律
  1. 事業は何であるかを徹底的に見当し定義する
  2. 定義に従い、明確な目標を立てる
  3. 活動の優先順位を決める
  4. 成果の尺度を定める
  5. 成果による自己管理を行う
  6. 目標に照らして成果を監査する
第3章 仕事と人間--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
9 新しい現実
  • 労働人口の中心は肉体搖動者から知識労働者へと移動
  • 新しい3つの挑戦
  1. 被用者社会の到来
  2. 肉体労働者の心理的、社会的地位の変化
  3. 脱工業化社会における経済的、社会的センターとしての知識労働者の台頭
10 仕事と労働
  • 働く人が満足しても、仕事が生産的に行わなければ失敗、仕事が生産的に行われていても、人がいきいきと働けなければ失敗
  • 仕事とは課題、労働は人の活動
  • 労働における5つの次元
  1. 生産的な次元・・・人は機械のようには働けない
  2. 心理的な次元・・・働くことは人格の延長であり自己実現である
  3. 社会的な次元・・・働くことが、人と社会をつなぐ絆
  4. 経済的な次元・・・労働は生計の基盤
  5. 政治的な次元・・・組織内で働くことは権力関係が伴う
  • 「手だけを雇うことはできない、人がついてくる」エルトン・メイヨーの言葉
11 仕事と生産性
  • 生産性向上の条件
  1. 分析・・・仕事に必要な作業と手順を知る
  2. 総合・・・作業を集め、プロセスとして編成
  3. 管理・・・プロセスの中に管理手段を組み込む
  4. 道具
  • 成果を中心に考える
12 人と労働のマネジメント
  • マグレガ-のX理論とY理論・・・X理論:人は怠惰で強制しなければならない⇔Y理論:人は仕事を通じて自己実現を欲する
  • アメとムチ・・・X理論によるマネジメント、現代では通用しない
  • 心理的支配・・・心理的によって人を支配し操作、人をバカにしている
  • 日本企業での成功
  1. インダストリアル・エンジニアは仕事の内容を明らかにした時点で職場に任せる
  2. トップを含む全員が、退職するまで日常的に研鑽する
  3. 終身雇用
  4. 福利厚生
  5. 年功序列・・・協力なリーダーを育てようとは思わない
  6. 組織のあらゆる階層が、組織全体のための観点から考える
  • ツッイス方式の秘密・・・働く者は製品や仕事に対して情報をフィードバックし、自分の仕事を管理
  • IBMの試行錯誤
  1. IBMの創始者トマス・J・ワトソン・シニアは、機械の前で座っている女工に、なぜ仕事をしないか聞くと、「工具を替えてくれるのを待っている」と答えた。自分にはできないのかと聞くと、「できます。でも、しないことになっています」との返事が返ってきた。IBMの第1イノベーション:職務の拡大
  2. IBMの第2イノベーション:技術者と技能者共同によるエンジニアリング
13 責任と保障
  • 人に責任を持ってもらうためには仕事に焦点を合わせることが必要
  • 働きがいの3つの条件・・・仕事をするもの自らが参画する必要がある
  1. 仕事が生産的でやりがいがあること
  2. 自らの成果についてフィードバックがあること
  3. 継続して成長できる環境であること
  • 職場コミュニティにおける責任はマネジメントにとって重要ではない、コミュニティに任せるべき
  • 責任を負ってもらうには身分保障が必要
14 「人は最大の資産である」
  • 権限を働く人へ与えない理由・・・権力と権限の混同
  • マネジメントはもともと権力を持たない。もつのは責任だけ
  • 分権化はトップマネジメントを強化する。(権力を奪われるわけではない)
  • 分権化により、責任をもつことになった人は、トップに高度な要求をする
  • 人を生かす3つの方法
  1. 仕事と職場に成果と責任を組み込む
  2. 共に働く人たちを生かすべきものとして捉える
  3. 適材適所
第4章 社会的責任--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
15 マネジメントと社会
  • かつての企業の社会的責任のテーマ
  1. 私的な倫理と公的な倫理との関係
  2. 働く者に対する責任
  3. 地域社会への貢献・・・奉仕や慈善活動
  • 現在のテーマは社会問題や環境問題にいかに貢献できるか
  • 企業の社会貢献に関する3つの物語
  1. ウェストバージニア州ビエナの町・・・大手化学会社ユニオン・カーバイドは、かつてウェストバージニア州産の石炭を使っていた。そこで、同州の高失業地帯に採算はぎりぎりながらも社会貢献の立場から、工場をを立地し、1500人の雇用をもたらした。当時としては最新の公害防止設備を設置していたにもかかわらず、10年後、環境問題への関心の高まりとともに、住民から公害に対する苦情を受けるようになり、悪名をアメリカ全土に喧伝された。
  2. スウィフト・デ・アルヘンティーナの悲劇・・・スウィフト・デ・アルヘンティーナはアルゼンチン最大の食肉工場で、貧困地帯での最大の雇用主だった。しかし食肉加工業は衰退し、カナダ系企業のデルテック社が買収した。同社は、雇用を守るため資金を投資を行い合理化を行ったが、業績の回復しなかった。工場を閉鎖する際、債権者に対し、長期分割による返済を提案、法律で定められた以上の同意をえた。しかし、法廷は同意に不正があるとして、スウィフト・デ・アルヘンティーナを破産宣告。ディック社に対しては債権者としての権利を奪われた。この決定は世論の支持をうけた。
  3. 公民権とクエーカーの良心・・・アメリカの大手鉄鋼メーカーの南部の事業所に、新たに公民権運動のボランティア活動もしたことのあるクウェーカー教徒が事業部長に就任した。この事業所は、法律に反して黒人を差別する人事をしたいた。新事業部長は、トップから、摘発を受ける前に、人員配置を見直すよう指示を受けた。実際に白人に気を配りながら、黒人の一部にいくつかの地位に任命した。そのことが原因でストライキが発生。たとえ法的・道徳的に正しいことであっても、地域のルールを大企業の力で変えることは許されない、ということで、新事業部長は会社をやめた。数年後、この会社は、摘発を受けた。、
  • 3つの話から得る教訓・・・社会的責任は、自らの役割を検討、目標を設定し、成果をあげるようマネジメントしなければならない
16 社会的影響と社会の問題
  • 社会的責任が生まれる2つの領域
  1. 自らの活動が社会に与える影響の問題・・・組織が社会に行ったことによる責任
  2. 自らの活動とは無関係な社会自体の問題・・・組織が社会に行えることに関わる責任
  • マニジメントが社会の問題をつくったわけではなくでも、社会の問題はマネジメントを必要とする
  • 社会に対する影響をいかに対処するか
  1. 影響を事業上の機会とする・・・汚染物質から新製品を開発(アメリカのダウ・ケミカル社)
  2. 規制案を作成、公共の場での論議をうながし、最適な規制を実現するよう働きかける(これにより同業者もコストを支払うことになる)
  • 社会の問題は社会の機能不全⇒ビジネスチャンスと捉える・・・フォードは労働争議の時代、賃金を3倍に上げた。その結果、労働移動が激減し、かえって自動車1台当たりのコストが下がった。この影響で、アメリカの労働者階級が中産階級への変わっていった。
17 社会的責任の限界
  • 本来の機能が遂行されてることがが、社会貢献を行う上での必要条件
  • 自らの能力以上のことを受けることは、かえって無責任
  • 価値観の違う取り組みは引き受けない
  • 権限のない責任は引き受けない:権限と責任は裏表の関係
18 企業と政府
  • 2つ歴史上のモデル・・・政治モデル、1世紀以上前のもの
  1. 重商主義モデル:経済は国の主権、行政による企業の支配・・・ビスマルクのドイツ、戦前の日本
  2. 立憲主義モデル:政府と企業は対立関係、法律による規制「○○するなかれ」
  • 新しい問題
  1. 混合経済の進展・・・政府と企業が競合相手となる社会
  2. グローバル企業の発展・・・企業はグローバルだが、政府は国家的
  3. 社会の多元化・・・企業が社会的責任を負い、政府の独自性がなくなる
  4. マネジメントの台頭・・・オーナー兼起業家からマネジメントへ以降し企業が官僚化、政府省庁の人間もマネジメント化し、両者の境界線がなくなる
  • 解決策を判断する基準
  1. 企業とそのマネジメントを、自立した責任のある存在とする
  2. 変化を可能とする自由で柔軟な社会を守る
  3. グローバル経済と国家の政治主権の調和
  4. 機能を果たす強力な政府の維持強化
19プロフェッショナルの倫理-----知りながら害をなすな
  • 企業倫理以前の問題
  1. 企業人は盗んだり、嘘ついたり、贈収賄してはならない⇒企業人のみならず人としてしてはいけないこと
  2. 顧客をもてなすためにコールガールを雇う⇒倫理の問題ではなく美意識の問題
  3. 地域社会に対して積極的な役割をはたす⇒強制されるべきものではないし、それをしたからといって、企業内で賞されるべきものでもない
  • リーダー的地位にある者はプロフェッショナルな倫理が要求される
  • プロフェッショナルな責任とは「知りながら害をなすな」(ギリシャの名医ヒポクラテスの言葉)

Part2 マネジメントの方法 ====================================================================
20マネジメントの必要性
  • フォード・・・1905年に無からスタートしたヘンリーフォードは、1920年代、世界最大のメーカーをつくったが、数年後衰退。1944年ヘンリーフォード2世が同社を引き継ぎ、祖父の取り巻きを追放、マネジメントチームをつくり復活
  • シーメンス・・・ヴェルナー・フォン・シーメンスは助手と補佐だけで経営、1870年代後半ころから方向性を失い、無管理状態に。シーメンスが亡くなった5年後の1897年、ドイツ銀行の頭取だったゲオルグ・シーメンスが、創立者の相続人に迫ってマネジメントの導入。数年で復活
  • 三菱・・・岩崎弥太郎はオーナー兼起業家だけが権限と責任をもつべきと考え、マネジメントを信じなかった。弥太郎の死後、マネジメントチームをつくり、岩崎家は敬意をもって遇されたがマネジメントがかははずされた。そこから三菱の真の成長が始まった
  • GM・・・フォード社に負け、売りに出ていた自動車会社を合弁してできたGMは当初、旧オーナーたちが好き勝手にマネジメントをしていた。アルフレッド・P・スローン・ジュニアは、旧オーナーたちを一つのトップマネジメントチームに組織し、アメリカ自動車会社のトップになった
第5章 マネージャー--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
21 マネージャーとは何か
  • かつての定義:人の仕事に責任をもつもの⇒組織の成果に責任をもつもの
  • 専門家のもつ知識と能力を全体の成果に結びつけることがマネージャーの仕事
  • マネージャーは専門家のボスではなく、エージェント
  • 逆に専門家はマネージャーの上司とならなければならない
  1. 野球のスターは監督やコーチより報酬が多い
  2. 花形セールスマンは地域販売部長より多い報酬を受けるべき
22 マネージャーの仕事
  • 2つの役割
  1. 部分の輪より大きな成果を生み出す生産体をつくること・・・オーケストラの指揮者
  2. 決定や行動の優先順位をつけること
  • あらゆるマネージャーに共通する仕事
  1. 目標を設定する
  2. 組織する
  3. 動機づけとコミュニケーションを図る
  4. 評価測定する
  5. 人材を開発する
  • マネージャーの資質は「真摯さ」
  • マネージャーの職務設計の間違い
  1. 職務を狭く設計すること・・・成長することができない
  2. 補佐役は独自の目的・目標・機能がない⇒ボスに売り込むことをするようになり堕落する
  3. 仕事がなくて部下の仕事をとるようではいけない⇒プレーイングマネージャーであるべき
  4. マネージャーの仕事はマネージャー一人で遂行できるもの・・・会議や調整が必要な職務は間違っている
  5. マネージャーの仕事の不足をポストで補ってはいけない
  6. 「後家づくり」の仕事は設計し直すべき・・・「後家づくり」とは、その昔、ある船が現れると、なぜか事故死起こすことがあり、その船主は、その船を解体した。⇒かつて1人前以上の仕事をしたマネージャーの仕事がそのまま職務として確立された場合が多い
  • マネージャーの限界は部下の数ではなく、関係の数・・・関係には部下との関係以外に横や縦の関係がある
  • 職務設計の4つの視点・・・マネージャーはこれら4つの視点から自らの仕事を主体的に知る必要がある
  1. マネージャー本来の仕事・・・継続的な仕事
  2. 個々のマネージャーに割り当てる仕事・・・職務規定以上のものを与えると優れた成果をあげる
  3. マネージャーの仕事は上、下、横の関係により規定される
  4. マネージャーの仕事は情報の流れにおける位置により規定される
23 マネージャーの開発
  • マネージャーは育てるもの
  • マネジメント開発ではないもの
  1. セミナーに参加することではない
  2. 人事計画やエリート探しではない
  3. 人の性格を変えることではない・・・雇用主は人の性格にとやかくいう資格はない
  • 被用者が要求されるものは、忠誠、愛情、行動様式ではなく、成果のみ
24 自己管理による目標管理
  • 人を間違った方向へ持っていく4つの要因
  1. 技能の分化・・・3人の石切り工の話、何をしているかを聞かれ「暮らしを立てている」「最高の石切り工の仕事をしている」「教会を建てている」 第1の男は1日分の日当をもらい1日分の仕事をしているだけでマネージャーになれない。第2の男は技能が目的よりも優先しており問題。第3の男はマネージャー
  2. 組織の階級化・・・上司の言動、些細な言葉じりが意図されたものと受け止められる
  3. 階層の分離・・・階層により仕事の関心に違いがあることから、まちがった方向に進む
  4. 報酬の意味づけ・・・報酬は組織にとってはコスト、個人にとっては収入、報酬は協力な動機づけとなるが、適切な報酬システムなど存在しないため間違った方向へ導くことがある
  • 目標管理・・・トップマネジメントは目標間のバランスが大事、キャンペーン方式のマネジメントは間違った方向に進みやすい
  • 自己管理・・・自己管理には強い動機づけをもたらす、自己管理による目標管理こそマネジメントの哲学たるべきもの
25 ミドルマネジメント
  • かつてのミドル・・・支店長、セールスマネージャー、工場長・・・命令するだけの人
  • 新種のミドル・・・専門家・・・自分の決定が組織の動かし、自分の上の人に責任をもつ
  • 新種のミドルにいかに成果を上げさせるかが今日のマニジメントの課題
26 組織の精神
  • 組織の役目は人の弱みを無意味にすること
  1. 組織の焦点は成果に合わせる
  2. 組織の焦点は問題ではなく機会に合わせる・・・問題中心の組織は守りの組織
  3. 人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に合わせる・・・人事は最大の管理手段
  4. 人事に関する決定は、真摯さが唯一絶対の条件・・・真摯さを絶対視して初めてまともな組織といえる
  • マネージャーとして失格の人(真摯さが欠けている)
  1. 強みよりも弱みに目を向ける
  2. 何が正しいか、よりも誰が正しいかに関心がある
  3. 真摯さよりも、頭の良さを重視する
  4. 部下に脅威を感じる者
  5. 自らの仕事に高い基準を設定しない者
第6章 マネジメントの技能--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
27 意思決定
  • 問題を明確にする・・・何についての意思決定かを明らかにするために、問題に対する見解からスタートする
  • 意見の対立をうながす
  1. 不完全であったり、間違った意見にだまされることを防ぐ
  2. 代案を手にできる
  3. 自分自身や他の人の想像力を引き出せる
  4. 意見の相違を重視する・・・なぜ意見が違うのかを明らかにする
  • 行動すべきか否か
  1. 行動によって得られるものが、コストやリスクより大きいときは行動する
  2. 行動するかしないかいずれかにする、二股をかけたり妥協はしない
  • 意思決定の実行・・・・いかなる地位のものが意思決定をするかにより意思決定後の迅速さがかわるフィードバックの仕組み
  1. 意思決定の前提となった予測をはっきりさせる
  2. 決定の結果について体系的にフィードバックする
  3. このフィードバックの仕組みを決定を実行する前に作り上げておく
28 コミュニケーション
  • 4つの原則
  1. コミュニケーションは知覚である・・・「大工さんと話すときは大工さんの言葉をつかえ」ソクラテスの言葉(プラトンの『パイドン』より)
  2. コミュニケーションは期待である
  3. コミュニケーションは要求である
  4. コミュニケーションは情報ではない
  • 上から下へ、下から上へ・・・耳を傾けることはコミュニケーションの基本
  • 目標管理がコミュニケーションの基本、同じ事実を違う見方をしていること自体がコミュニケーション
29 管理
  • 組織における管理手段の3つの特性
  1. 管理手段は純客観的での純中立的でもありえない・・・人間社会は測定できない、主観的な世界
  2. 管理手段は成果に焦点を合わせる
  3. 管理手段は測定可能な事象のみならず、測定不可能な事象に対しても適用させなければならない
  • 管理手段の7つの要件
  1. 管理手段は効率的でなければならない
  2. 管理手段は意味あるものでなくてはならない
  3. 管理手段は測定の対象に適していなければならない
  4. 管理手段の精度は、測定の対象に適していなければならない
  5. 管理手段は、時間間隔が測定の対象に適していなければならない
  6. 管理手段は単純でなければならない
  7. 管理手段は行動に焦点を合わせなければならない
30 経営科学
  • 経営科学を生産的にする4つの条件
  1. 仮定を検証する
  2. 正しい問題を明らかにする
  3. 答えでなく代替え案を出す
  4. 問題に対する公式ではなく理解に焦点を合わせる
  • マネージャーたるものは、経営科学とは何であるか理解しておかなければばらない
第7章 マネジメントの組織--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
31 新しいニーズ
  • フェヨールやスローンから学んだこと
  1. 組織はおのずから進化しない、進化するのは混乱、摩擦、間違った成果だけ
  2. 組織構造の設計は最後に手をつけるべきもの、最初に手をつけるべきは組織の基本単位を明らかにすること
  3. 構造は戦略に従う。組織構造は組織が目的を達成するための手段
農民の諺「2人のよい主人より1人のわるい主人の方がまし」

32 組織の基本単位
  • 4つの問題
  1. 何を組織の単位とするか
  2. 何を一緒にし、何を分離するか
  3. いかなる大きさと形にするか
  4. いかなる位置づけをおこない、いかなる関係をもたせるか
  • 活動分析
  1. 組織構造設計は「目的を達成するには、いかなる分野において卓越性が必要か」の問いに答えることから始まる
  2. 「成果があがらないとき、いかなる分野に最大の弱点を見るか」の問いに答えることも必要
  3. 「本当に重要は何か」との問いに答えることも必要
  • 貢献分析・・・同一の貢献を果たす活動は一つにまとめ、同一のマネージャーのもとへ置く。同一の貢献を果たさない活動を一つにまとめてはならない
  1. 成果活動がある・・・測定可能な成果を生む活動
  2. 支援活動がある・・・アウトプットが他の組織に利用されて初めて成果を生む活動
  3. 家事活動がある・・・付随的な活動
  4. トップ活動がある
  • 決定分析
  1. 影響する時間の長さによって分類する
  2. 組織全体に与える影響の度合いによって分類する
  3. 考慮に入れるべき定性的要素の数によって分類する
  4. 問題が繰り返し出てくるかどうかで分類する
  • 意思決定の原則
  1. 可能な限り低いレベル、行動に近いところで行う
  2. 意思決定によって影響を受ける活動全体を見通せるだけの高いレベルで行う
  • 関係分析・・・活動間の関係は最小限に絞ることが原則
  • 悪い組織に現れる症状
  1. マネジメントの階層が増加⇒組織の原則は、階層の数を少なくし指揮系統を短くする
  2. 組織構造に関わる問題が頻繁に発生
  3. 要となる者の注意を重要でない問題や的外れの問題に向けさせる
  4. 大勢の人を集める会議を頻繁に開かざるをえない⇒会議なしで動く組織が理想
  5. 人の感情や好き嫌いに気を使うようになる・・・人間関係のお粗末な組織・・・人員過剰なことが多い
  6. 調整役や補佐役など実際の仕事をしない人たちを必要とする
  7. 組織病・・・大企業に多い⇒常にどこかで組織改革を行っている⇒組織改革は手術のようなもの、気軽に行ってはならない
33 組織の条件
  • 明快さ・・・組織マニュアルが必要な組織ではダメ
  • 経済性・・・人を成果に向けて動かすために必要なものは少なければ少ない方がよい
  • 方向づけの容易さ・・・関心を成果に向けさせる
  • 理解の容易さ・・・自分の活動の位置づけがわかる
  • 意思決定の容易さ・・・組織構造が意思決定のプロセスを強化していなかればならない
  • 安定性と適応性・・・安定するには適応性が必要、硬直した組織は脆い
  • 永続性と新陳代謝・・・明日のリーダーを内部から調達できなければならない
34 五つの組織構造
  • 仕事を組織できる3通りの方法
  1. 段階別の組織
  2. 技能別の組織
  3. 異なる技能を持つ人がつくるチーム
  • 職能別組織・・・明快で安定しているが、組織全体の目的を理解することは難しい。適用は現業の仕事に限る
  • チーム型組織・・・メンバーは全員、仕事が何であり、自分の責任は何かをしいているが、経済性が悪い。規模が大きいとうまくいかない。トップマネジメント、イノベーションのための仕事に最適。
  • 連邦分権組織・・・それぞれ自立した部門に分割、その内部は職能別組織やチーム型組織、今日においては最強な組織、トップは事業部門に手を出してはいけない
  • 疑似分権組織・・・複雑な大規模でありながら、製品やサービスが1種類である組織に有効、成果に合わせることが困難かつ一人ひとりが自分の仕事の意味を理解するのも困難
  • システム型組織・・・60年代アメリカの宇宙開発のための組織構造として発展、通常では適用困難
35 組織構造についての結論
  • 5つの組織構造に良い悪いはなく、適切に使うことが大事
  • 組織の健康を判定する基準は構造の美しさや完全さではなく成果

Part3 マネジメントの戦略 ====================================================================
36 ドイツ銀行物語
  • トップマネジメントは、ゲオルク・シーメンスが1870年~1880年にかけて確立
  • ドイツ銀行の成功から得られる教訓
  1. 事業全体を考えで意思決定することはトップマネジメントしかできない
  2. トップマネジメントはど独自の組織構造を必要とする
  3. トップマネジメントには情報、思考を供給すべき独自の機関が必要
  • トップマネジメントは今よりも将来、部分でははく全体にかかわりを持つため、現在の目標、組織、課題、情報とは異なる視角から事業を眺めなければならない

第8章 トップマネジメント--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
37 トップマネジメントの役割
  • 多元的な役割
  1. 事業の目的を考える役割
  2. 基準を設置する役割
  3. 組織を作り上げ、それを維持する役割
  4. トップの座にいる人ができる渉外の役割
  5. 行事や夕食会などの儀礼的な役割
  6. 重大な危機に対して自ら出動する役割
  • トップに必要な性格
  1. 考える人
  2. 行動する人
  3. 人間的な人
  4. 表に立つ人
38 トップマネジメントの構造
  • トップマネジメントはチームで行う仕事
  • トップマネジメントをする者は、トップの役割でない責任をおわなくてもすむようにする
  • トップマネジメントがチームとして機能する条件
  1. メンバーは、それぞれの担当分野において最終的な決定権を持たなくてはならない
  2. メンバーは自らの担当以外の分野について意思決定を行ってはならない
  3. メンバーは攻撃し合ってはいけない、褒めあうこともしないほうがよい
  4. トップマネジメントは委員会ではなくチーム、キャプテンはボスではなくリーダー
  5. メンバーは担当分野では意思決定を行うが、チームのみ判断しうる問題は保留しなければならない
  6. トップマネジメントの仕事は、意志の疎通に精力的に取り組まなければならない
39 取締役会
  • 取締役会は機能していない・・・1世紀も前に考え出されたものが長生きしすぎた
  1. 大企業の所有権は少数の金持ちではなく大衆になったため、取締役会は所有者を代表していない。そのためメンバー選出方法が正当性を失った
  2. 統治は常勤の職務、非常勤では統治できない
  3. トップマネジメントは意味ある取締役会を望まない。黙っていてほしい
  • 取締役会の3つの条件
  1. 審査のための機関が必要
  2. 成果のあげられないトップマネジメントを交替させる機関が必要
  3. 場外のための機関が必要
第9章 マネジメントの戦略--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
40 規模のマネジメント
  • 組織の規模は複雑さを左右し、複雑さは規模を左右する
  • 規模は戦略を左右する
  • 組織の規模には上限と下限がある
  • 小企業のマネジメントに必要なこと
  1. われわれの事業は何か、何であるべきか」を問い、答えること
  2. トップマネジメントの役割を組織化すること
  • 中企業のマネジメントは持てる資源をあげて、成功の基盤となる分野を確保することが大事
  • 大企業のマネジメントは機敏さに欠けるので、あなり育ちそうもない事業には手を出すべきでない
  • 企業は今の規模が適切かどうか知らなければならない
  1. 鉄鋼会社は小規模ではできない
  2. 出版業は大規模ではできない
  3. 航空会社は中規模ではできない
  • 不適切な規模への対策
  1. 事業の性格を変える
  2. 合弁と買収
  3. 売却、切り捨て、縮小
41 多角化のマネジメント
  • 多角化の内的要因
  1. 違うことをしたくなる
  2. 規模が不適切であるる
  3. コストセンターの収益化がある
  • 多角化の外的要因
  1. 1国の経済規模
  2. 市場の論理・・・グローバル企業
  3. 技術・・・技術が技術を生む
  4. 現代の税制・・・投資家への還元より事業への再投資を優遇
  5. 2つの新市場の出現・・・大衆市場としての資本市場、大衆市場としての人材市場
  • 多角化を調和させ、一体化を保つ方法
  1. 共通の市場のもとに事業を統合
  2. 共通の技術のもとに事業を統合
  • 無効な多角化
  1. 共通の市場による多角化と共通の技術による多角化を同時に行うことは無謀
  2. 事業というのは異なる周期を持ち、相補うとの考えは間違い
  3. 資金需要の大きな事業を資金余裕のある事業に組み合わせるための多角化は誤り
  4. 業績や成長のためではなく多角化のための多角化は誤り
  5. 新事業に新出することのよって既存事業の弱さを補う多角化は失敗する
  • 多角化する上で体質の一致は重要
  • 多角化マネジメントの4つの手段
  1. 自力開発
  2. 買収
  3. 分離
  4. 合弁
  • 合弁会社が守るべき原則
  1. 親会社2社と合弁会社の目標をあらかじめ明らかにしておく
  2. 親会社2社が対立したときの仲裁者をあらかじめ決めておく
  3. 合弁会社に自立性を与えてはならない
  4. 合弁会社が大きく発展したときは、独立させなければならない
42 グローバル化のマネジメント
  • グローバル企業は国境を必然性のない制約の一つとして見る最初の没国家組織・・・最初の重要な現代組織
  • グローバル企業は意志決定が経済の合理性に基づいており、政治的な主権の意志から絶縁されているため問題となる
  • 国際的な取り決めとしての行動規範によって政治と経済を調和させることが唯一の解決策
43 成長のマネジメント
  • 成長には戦略が必要
  • 成長を目標にするな、よい企業になることが正しい目標
  • 必要とされる成長の最少点と最適点については検討しておく必要がある。成長は最適点以下でなければならない
  • 成長のための3つの準備
  1. 基本活動を明らかにし、それらの活動に取り組むトップマネジメントチームを編成する
  2. 変化すべきときをしるために、方針と行動の変化を要求する兆候に注意する
  3. 心底変化を望んでいるかを正直に判断する
44 イノベーション
  • イノベーションを行う組織の共通の特徴
  1. イノベーションの意味を知っている・・・イノベーションとは科学や技術ではなく価値、市場に焦点をあてる
  2. イノベーションの力学を理解している
  3. イノベーションの戦略を持っている
  4. 管理的な目標や基準とは別に、イノベーションのための目標と基準の必要を知っている・・・イノベーションの活動に対して既存事業の会計上の慣行することは間違い
  5. トップマネジメントの果たす役割と姿勢が違う・・・イノベーションとは姿勢であり行動・・・未知を恐れない風土が大事
  6. イノベーションのための活動を、管理的な活動のための組織から独立して組織している・・・沈滞に対して抵抗する組織をつくる
45 マネジメントの正当性
  • 組織社会と知識社会、マネジメントはこの二つの発展の原因であり発展
  • マネジメントの役割
  1. 組織本来の使命を果たすべくマネジメントすること
  2. 生産的な仕事を通じて人に成果をあげさせること
  3. 社会と個人の生活の質を提供すること
結論
  • 「個人の強みは社会のためになる」これがマネジメントの正当性の根拠であり、マネジメントの権限の基盤となりうる理念的原理
付章 マネジメントのパラダイムが変わった--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
  • 組織運営上の前提とされてきたもの
  1. マネジメントは企業のものである × ⇒ マネジメントはあらゆる種類の組織のもの
  2. 唯一絶対の組織構造がある × ⇒ 唯一絶対の組織構造はなく、それぞれの仕事に合った組織構造を探究が必要とされている
  3. 唯一絶対の人のマネジメントがある × ⇒ そもそも、マネジメントの対象が人ではなく成果である、人について行うべきはマネジメントではなくリードすること
  • 事業経営上の前提とされてきたもの
  1. 技術と市場とニーズはワンセットである × ⇒ 技術は基盤とはならない、顧客にとっての価値を基盤とすべき
  2. マネジメントの範囲は法的に規定される × ⇒ マネジメントの範囲は、法的ではなく実体的に規定される
  3. マネジメントの対象は国内にかぎられる × ⇒ マネジメントの対象を国境は一致しなくなった、国境はマネジメントの制約条件にすぎない
  4. マネジメントの領域は組織の内部のある × ⇒ マネジメントの役割は組織の外部において成果をあげること

この本は、10年以上も前に発行されたものだが、少しも古さを感じない。マネジメントが普遍的なのか、ドラッカーの先を見る目が優れているのか、恐らくその両方なのであろう。
すんなり読める本か、と問われたら、いいえ、と答えることになる。その理由はドラッカーの使う英語が日本語に訳しにくいためではないか、と推測する。訳者の上田さんはドラッカーの愛弟子であり、日本におけるドラッカーの第一人者である。上田さんいわく、「ドラッカーは20世紀最大の哲学者」。確かに哲学的な部分も多々あり、そのようなところはもっと熟読しないと理解できないと思った。


著者紹介
ピーター・ファーディナンド・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker, ドイツ語名:ペーター・フェルディナント・ドリュッカー/Peter Ferdinand Drücker, 1909年11月19日 - 2005年11月11日)は、オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系オーストリア人。経営学者。「現代経営学」あるいは「マネジメント」(management) の発明者、またマネジメントのグルの中のグルと呼ばれる。
経歴
ウィーンで裕福なドイツ系ユダヤ人の家庭に生まれる。1917年に両親の紹介で、同じユダヤ人の精神科医ジークムント・フロイトに会う。
1929年、ドイツ・フランクフルト・アム・マインの『フランクフルター・ゲネラル・アンツァイガー』紙の記者になる。1931年にフランクフルト大学にて法学博士号を取得。このころ、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)のアドルフ・ヒトラーやヨーゼフ・ゲッベルスからたびたびインタビューが許可された。
1933年、自ら発表した論文がユダヤ人を嫌うナチ党の怒りを買うことを確信し、退職して急遽ウィーンに戻り、イギリスのロンドンに移住。ジョン・メイナード・ケインズの講義を直接受ける傍ら、イギリスの投資銀行に勤める。1937年、同じドイツ系ユダヤ人のドリス・シュミットと結婚し、間もなくアメリカ合衆国に移住した。
1939年、処女作『経済人の終わり』を上梓。1942年にバーモント州ベニントンのベニントン大学教授、1950年にはニューヨーク大学教授となる。
1959年に初来日し、以降たびたび来日。日本画のコレクションを始める。1966年には勲三等瑞宝章を受勲。
1971年にカリフォルニア州クレアモントのクレアモント大学院大学教授となり、以後2003年まで務める。1979年に自伝『傍観者の時代』を、1982年には初めての小説『最後の四重奏』を著す。
2002年、アメリカ政府から大統領自由勲章を授与される。2005年にクレアモントの自宅にて老衰のため死去。95歳没。・・・ウィキペディアより抜粋

訳者紹介
上田惇生(うえだ あつお) ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授、ドラッカー学会代表
1938年埼玉県生まれ。64年慶応義塾大学経済学部卒。経団連会長秘書、国際経済部次長、広報部長、ものつくり大学教授(マネジメント、社会論)を経て、現在同大学名誉教授。立命館大学客員教授。 『プロフェッショナルの条件』ほか「はじめて読むドラッカー・シリーズ」四部作、「ドラッカー名言集」四部作、『エッセンシャル版マネジメント』の編集、翻訳のほか、『現代の経営』『経営者の条件』『断絶の時代』『イノベーションと起業家精神』『非営利組織の経営』『ネクスト・ソサエティ』『プロフェッショナルの原点』など、現代社会についての最高の哲人、マネジメントの発明者とされるピーター・F・ドラッカー教授(1909-2005)の主要著作のすべてを翻訳。現在、「ドラッカー名著集(全12作品14巻、2006-2008)」を編纂刊行中。他の訳書にエリザベス・H・イーダスハイム著『P・F・ドラッカー―理想企業を求めて』、著書に『入門ドラッカー-万人のための帝王学を求めて』(2006年9月)がある。 ドラッカーの経営思想について執筆、講演。2003年より経済誌『週刊ダイヤモンド』にて、2007年より情報サイト『ダイヤモンド・オンライン』にて、「経営学の巨人の金言・至言-3分間ドラッカー」を長期連載中。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)代表。 渋沢栄一賞選考委員、埼玉ちゃれんじ企業経営者選考委員会代表。ドラッカー経営思想の普及によりベスト・リスクマネジャー・オブ・ザ・イヤー2001(リスクマネジメント協会)受賞。・・・上田惇生ホームページより抜粋

2012年2月24日金曜日

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

今回、紹介する本は、2010年の大ベストセラーです。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』 岩崎夏海著 ダイヤモンド社 2009年発行

『もしドラ』と呼ばれるこの本を読まれた方は多いと思います。今回は、内容の紹介というより、なぜ大ベストセラーになったかを私なりに解説したいと思います。
  1. 表紙のカバーが萌え系の2次元アニメで、一見するとコミック本に見える
  2. この本が、書店で、ビジネス本の中に置かれているととても目立つ
  3. マネジメントと萌え系アニメとの組み合わせでインパクトが高い
  4. ドラッガーの『マネジメント -基本と原則』 と同じ本のサイズにし、セットにして並べたことより、相補的な効果がある
  5. ストーリーが昔の青春ドラマそのもので健全
  6. 登場人物が皆、魅力的かつ個性的で、それぞれ見せ場がある
  7. 悪役の登場人物がおらず、さわやか
  8. ハッピーエンドで終わり、読み終えた時の後味がよい
  9. ドラッガーの「マネジメント」のエッセンスが分かりやすく含まれている
  10. すんなりと読めるので、読み終えた時、ドラッカーのマネジメントが理解できた気になれる
私はダイヤモンド社の戦略にはまり、『もしドラ』と『マネジメント-基本と原則』を両方とも購入しました。
小学5年生の息子も、カバーに惹かれて私の書棚から持出し読んだようです。親子で出版社の営業戦略に引っかかったわけです。

著者の紹介をします。
東京都新宿区生まれ、日野市出身。。茗渓学園高校、東京芸術大学美術学部建築科卒業。
『夕やけニャンニャン』の大ファンで、週刊プレイボーイに連載を持っていた秋元康の企画にハガキを送ったことで秋元と縁を持ち、大学卒業後は秋元康に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』等、テレビ番組の制作に参加した後、2005年から2007年までAKB48アシスタントプロデューサーを務める。2007年12月に秋元康事務所を退職。その後、株式会社インディソフトウェアに入社しゲームやウェブコンテンツの開発を経て2009年4月から株式会社吉田正樹事務所所属。作家として活動を始める。2009年12月、作家として初めての作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を発表しミリオンセラーを記録。
監修をした書籍『甲子園だけが高校野球ではない』もベストセラーになる。・・・ウィキペディアより抜粋

マインドマップ読書術

今回紹介する本は、このブログを始めるきっかけをつくってくれた本です。
「マインドマップ読書術』 松山真之助著 ダイヤモンド社 2005年発行

私の書斎
私はもともと読書が好きて、自宅には、これまで読んできた本がところ狭しと並んでいます。
しかし、その内容を覚えているか?知識として活かされているか?と問われると、いいえ、と答えざるをkませんでした。意識上には上がってこないが、無意識の中で、何らかの考え方や思想に影響をあたえてくれているはずだ、といった言い訳を自分自身にしてきました。
そんな時、この本を読みました。
「1日1冊のペースで読んでも、翌日には中身の9割を忘れてしまう」
この言葉は私の心のど真ん中にグサッと入ってきました。
いままで薄々と感じていたことが、はっきりを書かれており、目が覚めた思いです。
「忘れないためには記録をつけるしかない」
この本では、マインドマップで記録することを奨励していますが、私にとってはハードルが高く、継続できないと感じました。そこで、文章だけでできるブログをアウトプットの手段に選びました。

実際にブログを始めてみると、読書の仕方もかわりました。後でブログを書くことを意識することで、集中力が増し、何が言いたいかをはっきり汲み取るように読むようになったのです。このことは、この本の中にも書かれていますが、ブログを始めて実感することができました。

著者は、もともと一般の会社員でした。仕事のかたわら、書評をメルマガにしているうちに、1万人を超える支持をうけるようになり、書籍を発行するまでになりました。
かつては「企業優先の時代」だったが、今は「個の時代」。インターネットの普及により、個人ブランドを容易に作り出せるようにたった今、大事なことは外に出すことだと言います。
外に出すことにも段階があります。
  1. メモを書く
  2. 日記に書く
  3. ブログに書く
  4. メルマガに書く
  5. 雑誌に投稿する
  6. 本に書く
後の方へいくほど、難しいですが、歓びも大きい。私はブログの段階を始めたばかりですが、楽しく、始めてよかったと思っています。継続することにより、自分を成長させ、ブログの内容をより良くすることで、このブログが広まるようにしていきたいと思います。

著者について
1954年 岐阜県生まれ。名古屋大学工学部大学院修了。
ビジネス書の書評メルマガ『We book of the Day』を発行している。また、ジェイカレッジの校長として「気づきと学びの場」を創出。現在、現在、KIT虎ノ門大学院で客員教授、東京藝大では非常勤講師として、ビジネスアイデア特論や社会事業マネジメント分野にて教鞭をとっている。
メルマガ発行、講演、執筆と多岐にわたり活躍中。・・・講演依頼.comより

2012年2月22日水曜日

世界一やさしい問題解決の授業

今日、2冊目の紹介は
『世界一やさしい問題解決の授業』 渡辺健介著 ダイヤモンド社 2007年発行
です。

この本を購入したきっかけは、先回紹介した『マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック』を読み終えた後、視野を広げるために、同じテーマの別の本を読みたいと思ったからです。
しかし、読み始めて、当初の目的にかなう本ではないことがすぐにわかりました。というのも、著者もマッキンゼー社出身で内容もマッキンゼーで習得したスキルを紹介したものだからです。
ただし、違う点が一つあります。『マッキンゼー式・・・』はビジネスマンをターゲットにした本ですが、この本は中学生くらいの子供を対象にしています。
仕事で問題解決を行っているビジネスマンのスキルを、子供にも分かりやすく伝えようとしています。この本を書いた動機は、著者が社会人になる前にこの方法を知っておきたかった、という思いがあったからです。

内容は
  • 1限目 問題解決能力を高めよう
  • 2限目 問題の原因を見極め、打ち手を考える
  • 3限目 目標を設定し、達成する方法を決める
これらを中学生バンド「キノコLovers」の集客を向上させるにはどうしたらよいか、といった子供に身近な問題を設定して、分りやすくレクチャーしています。

内容はQCの手法に近いものが紹介されていますが、唯一違うのが、「仮説を立てる」ところです。これはマッキンゼーのやり方です。
子供相手ですので、QC手法の「要因系統図」を「分解の木」と言い換えるなどして親しみやすいように書かれています。

問題解決能力は、仕事上だけではなく、人生のあらゆる局面で使うことができるスキルなので、早速息子に読ませたいと思いました。

この本を読んで、ふと思い出した本があります。2010年の大ベストセラー『もしも高校野球のマネージャーがドラッガーの「マネジメント」を読んだら』・・・通称『もしドラ』です。
この本もビジネスマンのスキル「マネジメント」を学生にもわかりやすく紹介した本でした。出版社はどちらもダイヤモンド社です。もしかしたら、この本がヒントとなり『もしドラ』が生まれた?などと勝手な想像をしてしまいました。

著者紹介
 渡辺健介  1999年イェール大学卒業。同年マッキンゼー・アンド・カンパニー東京オフィス入社。2005年ハーバード・ビジネススクール卒業。 同年マッキンゼー・アンド・カンパニーニューヨークオフィスへ移籍。同社を退社後、デルタスタジオを設立。神奈川県出身。・・・http://www.statusdesign.net/persons.p... より抜粋

宇宙は何でできているのか

今回紹介する本は
『宇宙は何でできているのか』 村山斉著 幻冬舎新書 2010年発行
です。

私は、宇宙論や素粒子論に興味があり、大学を卒業して以来、今までにこの手の本をいくつも読んできました。この分野は分かっていないが多く、通説と思われてきたことがひっくり返ることがしばしばあります。したがって、数年前に仕入れた知識は実は間違っていた、となりかねないので、ときどき最新の情報をチェックする必要があります。

この本の内容はタイトルどおり「宇宙は何でできているのか」なのですが、結論からいうと、「ほとんど分かっていない」ということです。これまでは、宇宙は星やガスなどの通常の原子でできていると思われてきました。おそらく、宇宙に興味のない方は、いまでもそう思っているのではないでしょうか。
しかし、質量がないと思われていたニュートリノに質量があることが分かり、しかもそれは、宇宙にある全ての星とほぼ同じ質量を持っていることがわかりました。これが1998年のことで大事件でした。
では、ニュートリノと全ての天体とチリやガスなどの原子がすべてかといえば、そうではありません。
今わかっているのは
  • 星と銀河 0.5%
  • ニュートリノ 1~1.5%
  • 普通の物質(原子) 4.4%
合計 約6%
分かっているのは、たったの6%です。残りの約94%は現代の科学では分かっていないのです。
少し前までは、全てわかっていたつもりだったのですが、最近になって、ほとんどわかっていないとこが分かりました。これが2003年のことです。

それでは、どうしてこんな事態になったかといえば、宇宙が今どんな状態かを見誤っていたためです。これまで、宇宙は現在膨張しているが、いずれは重力により膨張の速度が弱まると考えられてきました。しかし、最近になって、宇宙の膨張が加速しているという観測データが出てきました。
これが正しければ、今分かっている宇宙の全質量では、つじつまがあいません。
この観測結果は正そうなので、データより計算すると、他に約94%の質量がどこかにないとおかしいということになったのです。

では残りの94%は何かというと、23%が暗黒物質(ダークマター)、73%が暗黒エネルギー(ダークエネルギー)というものでできていると考えれられています。しかし、これらが何かはまだわかっていません。
今分かっていることは、天の川銀河の質量だけでは、我が太陽系は天の川銀河にとどまっていることができない。とどまっているためには、もっと質量が必要で、その質量分の物質をとりあえず暗黒物質と名付けた、これだけです。
では、暗黒エネルギーとは何かと言えば、暗黒物質以上によく分かっていません。宇宙の膨張は重力の影響で減速すると考えられてきましたが、実際は加速しています。加速するためには、膨張を手助けする何らかのエネルギーが必要であり、そのエネルギーの名をとりあえず暗黒エネルギーと名をつけた、分かっているのはこれだけです。

これから、暗黒物質や暗黒エネルギーについては、いろいろなことが新発見されると思います。
ニュース等で暗黒物質、暗黒エネルギーといったキーワードが出てきたときは、要チェックです。

最後に著者の紹介をします。
東京大学理学部に入学し、素粒子物理学を専攻。東北大学助手の後に渡米。2008年現在、カリフォルニア大学バークレイ校 MacAdams 冠教授。東京大学数物連携宇宙研究機構機構長。
主な研究分野は超対称性理論、ニュートリノなどである。
著書
『宇宙に終わりはあるのか?―素粒子が解き明かす宇宙の歴史』 (ナノオプトニクスエナジー出版局、2010年10月)
『宇宙は何でできているのか』 (幻冬舎、2010年9月28日)・・・ウィキペディアより

著者は「小学2年生の頃、微積分を理解した」という、天才肌の研究者です。
著者の提案した研究に国は約100億円の予算をつけました。40代の研究者にこれだけの金額を国が委ねることは極めて異例なことで、著者への期待の高さがうかがえます。

2012年2月17日金曜日

マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック

今回は
『マッキンゼー式世界最強の問題解決テクニック』 イーサン・M・ラジエル、ポール・N・フリガ著 嶋本恵美、上浦倫人訳 英治出版 2002年発行
を紹介します。

マッキンゼーとは世界で最も成功しているコンサルティング会社です。日本の著名人では、大前研一さんや勝間和代さんがマッキンゼー社出身です。


1.問題の構造を把握する
1.構造を把握する
マッキンゼーのテクニック
  • MECE を貫徹させる ⇒ MECEとは「互いに重ならず、すべてを網羅する」(Mutually Exclusive, collectively Exhausive)
  • 初めての問題など存在しない
  • クライアントは、それぞれが唯一無二
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 構造がないと、アイデアに説得力がない
  • 構造を利用して、思考を強化する
活用・実践ガイド
  • 現実を構造化する
  • 問題を構成要素に分解する
  • 論理ツリーを活用する
  • 論理ツリーは MECE であること
  • 複雑な問題を単純な形で表現する
  • 新しいフレームワークを考える
2.当初仮説を立てる
マッキンゼーのテクニック
  • 最初の会議で問題を解決してしまう
  • 用意周到な準備が必要
  • 白紙の状態から始める
  1. 悪いアイデアというものはない
  2. ばかげた質問というものはない
  3. 自分のアイデアが退けられるのをいやがらず、必要があれば自分から取り下げる
  4. 会議が長くなりすぎて収穫が減ってきたら、無理に続けないで中止する
  5. 紙に書く (以上ブレーンストーミングのルール)
  • その問題は本当に解決すべき問題なのか
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 当初仮説は時間の節約になる
  • 当初仮説によって意志決定がより効果的になる
実践・活用ガイド
  • 仮説はクイック・テストにかける
  • 問題点ツリーを作成する
2.分析を計画する
マッキンゼーのテクニック
  • キー・ドライバーを探す
  • 大きな絵を眺める
  • 海の水を全部沸かすな
  • 解決策が姿を現すまで待つこともある
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 立てた仮説から必要な分析を割り出す
  • 分析の優先順位をきちんと決める
  • 絶対的正確さを目指さない
  • 難しい問題は三角法で測定する
実践・活用ガイド
  • 問題点をリストアップする
  1. 答えに関する当初仮説
  2. 仮説を証明あるいは反証するのに必要な分析(重要な順に並べる)
  3. 分析するのに必要なデータ
  4. 考えられるデータ源(たとえば、国勢調査データ、フォーカスグループ、面接調査)
  5. 各分析の予想される最終結果の概要
  6. 各最終結果についての責任者(あなた自身かチームのメンバー)
  7. 最終結果の期日
  • 無用な分析を省く
3.データを収集する
1.リサーチの戦略とツール
マッキンゼーのテクニック
  • 問題解決は事実から出発する
  • 「見当もつかない」は暗号 ⇒ 「検討もつかない」という答えがかえってきたらチャンスとして受け止める
  • 具体的なリサーチの実践テクニック
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 自分の組織のデータに関する方針を診断する ⇒ 直観よりデータ、データの欠如が効率的な意志決定を妨げている
  • 確かな事実が持つ威力を証明する
  • 適切なインフラを構築する
実践・活用ガイド
  • 戦略的なデータ収集とは
  • 事実を重視する文化を築く
  • 適切な情報源を探す
2.面接調査のテクニック
マッキンゼーのテクニック
  • 事前の準備−面接調査ガイドの作成
  • 面接の本質−聴きかつ導く
  • 面接調査を成功させる七つの戦略
  1. 面接相手の上司にお膳立てをしてもらう
  2. 二人組で面接をする
  3. 誘導しないで耳を傾ける
  4. 相手がいったことを言い換えて確認する
  5. 間接的アプローチを用いる
  6. 面接相手に多くを求めすぎない
  7. コロンボ戦術を用いる
  • 面接の相手を裸にしない
  • 面接トラブル対処法
  • 必ず礼状を書く
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 面接を構造化する
  • 面接では聞くことに専念する
  • 面接ではこまやかな配慮をする
活用・実践ガイド
  • 面接前後のフォローに気を配る
3.ナレッジ・マネジメントを究める
マッキンゼーのテクニック
  • 初めての問題など存在しない
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • すぐに応える文化を創り出す
  • 外部の知識を活用する
  • 入力の質を管理する
活用・実践ガイド
  • 知識を共有する
  • 組織全体が参加する
4.分析結果を解釈する
1.データを理解する
マッキンゼーのテクニック
  • 80対20の法則
  • 毎日一つチャートを作る
  • 解決策に事実を当てはめるな
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 「だからどうなのだ?」と考える
  • 的外れでないことを確かめる
  • 分析には限界があることを忘れない
活用・実践ガイド
  • 事実が仮説と矛盾するときは、仮説を変える
  • 80対20の法則を活用する
2.最終結果を生み出す
マッキンゼーのテクニック
  • クライアントに合った解決策を提案する
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • クライアントの眼を通して見る
  • クライアントの能力の限界を考慮する
活用・実践ガイド
  • すべてを話してはいけない
  • クライアントが変化を起こすのを手伝う
5.最終結果をプレゼンテーションする
1.プレゼンテーションの構造
マッキンゼーのテクニック
  • 誰にでもわかる道順を示す
  • エレベーター・テスト
  • 簡潔に−一つのチャートに一つのメッセージ
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 思考をしっかりした構造で支える
活用・実践ガイド
  • プレゼンテーションも MECE で
  • 結論から始める
  • 事前にエレベーター・テストを実施する
  • 添付資料はシンプルであること
2.同意を得る
マッキンゼーのテクニック
  • 関係者全員に事前通告する
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 驚かれるようなことを避ける
  • プレゼンテーションを聞き手に合わせる
活用・実践ガイド
  • 柔軟に対処する
6.チームをマネジメントする
1.チームを編成する
マッキンゼーのテクニック
  • 最適なスキルと人材を慎重に選ぶ
  • マッキンゼー式採用プロセス
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 示された能力だけでなく、相手の潜在的能力にも配慮する
  • 多様性の価値を理解する
  • 計画性を持って人材を採用する
活用・実践ガイド
  • 誰を雇うべきか
  • どうやって探すか
  • 多様性を忘れずに
2.コミュニケーションを促進する
マッキンゼーのテクニック
  • 情報をスムーズに流す
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 耳は二つあるが、口は一つしかないことを忘れてはいけない ⇒ 話すことよりも聞くことの方が有益。世の中に聞いた時間の半分しか話してはいけないというルールがあれば、平和な世界になる
  • 何を言うかだけでなく、どう言うかが重要だ
  • コミュニケーションは、不足より過剰のほうがいい
活用・実践ガイド
  • 聞くトレーニングを利用する
3.きずなを育てる
マッキンゼーのテクニック
  • チームの士気に気を配る
  • きずなは、ほんの少しで十分だ
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • いっしょに過ごす(ただし、やりすぎは禁物)
  • 十分に報いる
活用・実践ガイド
  • きずなを深めるメリットを示す
4.成長を促す
マッキンゼーのテクニック
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 期待は高く
  • つねに働きぶりを評価する
活用・実践ガイド
  • 野心的な全体目標を作る
  • 目標を伝える
  • きちんと評価する
  1. 客観的に評価する
  2. あらかじめ設定した目標にもとづいて評価する
  3. 当人の努力のおよぶ範囲のことだけに焦点を絞って評価する
  • バランスに気を配る
7.クライアントをマネジメントする
1.クライアントを獲得する
マッキンゼーのテクニック
  • 売込みをしないで売り込む
  • あくまで到達可能な目標を設定する
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • クライアントをはっきりさせる
  • ニーズを押しつけるのではなく、引きつける
活用・実践ガイド
  • クライアントが誰で、ニーズは何なのかを考える
2.クライアントとの関係を調整する
マッキンゼーのテクニック
  1. クライアントを巻き込む
  2. いつも客観的な視点を忘れない
  3. クライアント・チームを味方につける
  4. 足を引っ張るクライアントのチームメンバーをうまく扱う
  5. 低い枝の実を採る
  6. 相手の組織全体の支持を獲得する
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • クライアントを巻き込む機会を作る
活用・実践ガイド
  • クライアントと協力して成果を生み出す
3.クライアントを保持する
マッキンゼーのテクニック
  • 提案は厳しく実行させる
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 責任を分け合い、そのあとに委譲する
  • クライアントをヒーローにする
活用・実践ガイド
  • 協力してもらう範囲をあらかじめ明確にしておく
8.あなた自身をマネジメントする
1.職場での生活
マッキンゼーのテクニック
  • 自分だけのメンター(師匠)を見つける
  • シングルを打つ
  • 自分の上司を引き立てる
  • 自己主張するときはリスク覚悟で
  • よきアシスタントを確保する
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 自分ができないことは他の人間に任せる
  • 自分の人脈を最大限に活用する
2.個人的生活
マッキンゼーのテクニック
  • 旅から旅の生活を楽しむ
  • 自分の生活を手に入れたければ、何かルールを作る
マッキンゼーでの教訓と成功例
  • 自分の時間を大切にする
  • 自分の精神状態をチェックする
  • 重荷は分かち合う
10年以上前の本だが、内容は少しも色あせていない。すべてのビジネスマンにお薦めできます。
トヨタの自主研と相通じるところがあり、実践で使えるテクニックが満載です。

この本の前に、著者は
『マッキンゼー式世界最強の仕事術』 イーサン・M・ラジエル、ポール・N・フリガ著 嶋本恵美、上浦倫人訳 英治出版 2001年発行
を出しています。
こちらは、具体性に欠けている(著者も認めています)ため、実際の仕事に役立てるには、本書をお薦めします。

生物と無生物のあいだ

今回紹介する本は
『生物と無生物のあいだ』 福岡伸一著 講談社現代新書 2007年発行
です。2007年に第29回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)、2008年に第1回新書大賞をそれぞれ受賞しています。

この本は、生物とは何か?という問いに著者自身の答えを出しています。その答え自身は、著者が始めて提唱したものではないようですが、一般の人は初めて知る話だと思います。
著者の答えは
生物とは「自己複製」と「動的平衡」をするもの
  • 「自己複製」とは、自分の分身をつくること
  • 「動的並行」とは、食事と排泄を繰り返し、体内の分子を常に新しいものに置き換えることであり、食事は、車のガソリンのように、単なるエネルギーではない
この定義からすると、「自己複製」はできても「動的平衡」でないウィルスは生物ではないことになると著者は説明します。

本の内容は、バラエティに富んでいます。

野口英世、ジェーム・スワトソン、フランシス・クリック、モーリス・ウィルキンズといった著名な科学者に対し、著者は大変辛口の評価をしています。また、オズワルド・エイブリ―、キャリー・マリス、ロザリンド・フランクリンに対してはもっと評価をされてしかるべき、と主張しています。このような話は、科学史や科学者の仕事に関心がある方にとっては、興味深いと思いますが、純粋に科学の話が知りたい読者にとっては、読み飛ばしたいと思われるかも知れません。

また、著者が自身の職場を回想するシーンは、科学の本とは思えないほど、抒情たっぷりに描かれています。これは、生物学者である著者の特筆すべき能力です。このことは、目次を見ただけでも伺い知ることができるので紹介しておきます。
  • 第1章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
  • 第2章 アンサング・ヒーロー
  • 第3章 フォー・レター・ワード
  • 第4章 シャルガフのパズル
  • 第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
  • 第6章 ダークサイド・オブ・DNA
  • 第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ
  • 第8章 原子が秩序を生み出すとき
  • 第9章 動的平衡とは何か
  • 第10章 タンパク質のかすかな口づけ
  • 第11章 内部の内部が外部である
  • 第12章 細胞膜のダイナミズム
  • 第13章 膜にかたちを与えるもの
  • 第14章 数・タイミング・ノックアウト
  • 第15章 時間という名の解けない折り紙
まるで小説の目次です。とても生物学の本の目次とは思えません。

私が気に入ったエピソードをひとつ紹介します。
「第8章 原子が秩序を生み出すとき」の中で、アインシュタインと並んで20世紀最高の物理学者であるシュレーデンガーの著書『生命とは何か』について説明しているくだりです。
シュレーディンガーは物理学者らいし考察で、原子の大きさに対して、生物の大きさがどのように決まっているのかを説明しています。
原子が少ない状態では原子ひとつひとつがそれぞれバラバラに動いており、秩序ある振る舞いをしない。しかし、原子が十分に多い場合は、平均的な振舞いをするため、高度な秩序を必要とする生物になりうる。という話です。

最後に著者の紹介をします。
生物学者・青山学院大学教授。1959年東京生まれ。京都大学農学部卒。研究のかたわら、「生命とは何か」を分かりやすく解説した著作を数多く著す。ベストセラー『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』ほか、著書多数。・・・福岡伸一オフィシャルブログ「福岡ハカセのささやかな言葉」より

2012年2月10日金曜日

進化しすぎた脳


今回紹介する本も「脳」に関するものです。
『進化しすぎた脳』 池谷裕二著 講談社BLUE BACKS 2007年発行

この本は薬学博士である著者が、大脳生理学の最先端を中高生を相手に分かりやすく講義をしたものです。

著者は、以前紹介した『のうだま』の共同著者でもあり、私のブログでは2度目の登場となります。

最先端といっても、語られていることは、誰もが興味を持つ、意識や、記憶といった身近な脳の働きをテーマとしています。
読んでみると、脳は日常活動の意外なところで働いていたり、今まで思い描いていた脳のイメージとかけ離れたことをしていたり・・・最初は想像しがたい事実も、著者の丁寧な説明のおかげでつじつまが合い納得できます。
逆に、常識と思っていたことが、研究を進めていくうちにつじつまがあわなくなり、違っていた、といったことも、わかりやすく伝えてくれます。
また、脳の話しとなると、どうしても「意識」とは、というテーマが出てきます。この哲学的なテーマに対し、著者なりの結論を出しており、読み応えがあります。
この本は、どこかで聞いたことのある話ばかり、といったものではありません。お薦めです。

以下、私が印象に残った話を紹介します。

脳の部位と体生感覚野の地図
手や足など、人間のさまざまな部位の機能が、大脳のどこに
対応しているかを表す「能地図」 1952年作
カナダの脳外科医ペンフィールド(1891-1976)によるもの
脳について
  • 脳が大きければ大きいほど、しわが多ければ多いほど賢いという通説は間違い。イルカは人間の脳よりはるかに大きくしわも多いが、知能は人間の3歳児並み。
  • 脳と他の臓器との違いは、他の臓器はどの部位をとっても同じ役割をしているのに対し、脳は部位ごとに役割が分かれている。聴覚野では、ヘルツ数によって反応する部位が分かれている。
  • 脳は部位ごとに役割が分かれているため、脳の一部を損傷しても、損傷した部位の機能が働くなるだけで、他のことは正常に働く。
  • 脳は部位ごとに役割が分かれているが、固定されているわけではなく、フレキシブルに対応する。発達段階に、目から入った神経を視覚野と切り離し、聴覚野につなげる動物実験では、ちゃんと目が見えるようになった。
  • 脳の発達は、カラダによって決まる。指が4本で生まれた子は、脳には4本に対応する神経しかできない。指の分離手術をして、5本の指ができたら、約1週間で、5本目の指に対応する場所が脳にできた。
  • コンピュータと脳の違い。コンピュータはハードウェア(キーボードやマウス)を取っても、コンピュータ本体は変わらないが、脳は、腕や足を取ると、それに対応する部位が衰えてしまう。
  • 脳のポテンシャルは高いが、カラダが単純な構造なため、脳の性能を持て余している。
  • 人間は運動神経と引き換えに、知能を発達させた。最も運動神経のよい動物は鳥。
  • 脳はどのようにして考えているのか?この問いに、偉大な天文学者ケプラーは、「脳の中に小人が入っており、その人が考えている」(ケプラーの小人理論)という説を大まじめに唱えた。
視覚について
  • 脳が補正をかけているため、片目でも立体感を感じることはできる。脳が立体感を感じるように補正をかけているため、錯覚が起きる。世界は3次元なのに網膜は2次元、補正をかけざるを得ず、錯覚が生じてしまう。
  • 網膜から出て脳に向かう視神経の数は、片目で約100万本。デジカメでいうと100万画素。脳は解像度では今のデジカメに負けるが、補正をすることにより補っている。
  • アニメやパラパラ漫画が滑らかに動いて見えるのは、脳が次の瞬間、どうなるかを予想して補っているため
  • 人間の目の時間解像度に合わせて、ビデオのコマ数が決められている。ビデオ1/30秒、映画1/24秒
  • 目から入った情報は形、色、動きをそれぞれ脳の別の部位で並行して行っている。しかし、解析にかかる時間は異なり、最初に色、次に形、最後に動きに気づく。
  • まず、世界があって、それを見るために、人間が目を進化させた、のではない。人間の目ができた初めて世界ができた。人間の見ている世界は人間独自のもの。他の動物は、違う世界を見ている。
  • 目の情報を処理するのは、視覚野だけではない。視覚野がダメになっても上丘という場所で目からの情報を受け取っている。上丘は原始的な脳で、単純な判断しかできないが、反応が速い。野球やテニスは、球を視覚野で処理していては、間に合わないため、上丘で処理しカラダを反応させていると考えられる。
  • 人間には盲点というものがあり、視界には見えていない場所がある。盲点は簡単に探すことができる。
盲点の実験:右目を閉じて左目で黒いエリアの中の白い丸を見る。顔を前後に動かし、左の黒い丸が消えるところが盲点

  • 網膜の中心に視神経用の穴が空いており、そこが盲点になっている。脳が周囲の情報から盲点の情報を予測し補正しているため、普段は盲点に気づかない。
  • 色を見分ける細胞は網膜の中心しかないため、ごく狭い範囲しか色をみていない。それ以外の部分は、脳が予想して埋めている。
  • クレヨンを視界ぎりぎりのところに置くと、クレヨンは判別できても、色はわからない。一度、色をみてしまうと、脳が学習してしまうため、補正してその色が見えるようになる。
意識について
人種や民族に関係なく人間の表情は上記の6種類
  • 人間の行動の中で、意識でやっていることは意外と少く、ほとんどが無意識の活動。
  • 意識の条件その1:表現の選択
  • 意識の条件その2:短期記憶(ワーキングメモリ)
  • 意識の条件その3:可塑性(過去の記憶)
  • 上記の3つを満たしている「言葉」は意識の典型
  • 表情のパターンは世界共通。赤ちゃんが、誰からも教わらずに顔の表情を全種類できるのは遺伝子の持っている情報のおかげ。
  • 言葉にないものは想像しづらい。言語学者のアブラム・ノーム・チョムスキーいわく「言語を知れば、その国や社会の構造体系を知ることができる」 。人間は言葉の奴隷。
  • 最も原始的な人間の感情は恐怖。危険なものから避けなければならないため。恐怖は「扁桃体」という場所で生まれる。
  • 動物は怖いから逃げるのではなく、扁桃体が活動したから逃げる。それと並行して大脳皮質に扁桃体の活動が伝わり、怖いという感情が生まれる。
  • 感情によって行動が決まるのではない。感情の価値は、人間の世界観に色彩をくわえたり、他人の感覚を想像して共感したりする。
スパイクの出力
活動電位(スパイク)は出口の繊維の根元の部分(図のX)
からスタートする。賛成派(グルタミン酸を使うシナプス)と
反対派(GABAを使うシナプス)があり、最終的にスパイク
を起こすかどうか(=発火)はこの根元で決める。
記憶について
  • なぜ記憶するのは難しいか?何度も繰り返し見ることにより、パターンをつかむため(汎化)例えば、デジカメのように見たものを完全に記憶すると、少しでも違っていると、同じものを同じと認識できない。したがって、何度も見ることによって、少しくらい違っていても同じものだと認識できるようになる。なかなか、覚えられないのは、頭が悪いためではなく、脳がそのように進化しているため。
  • あいまいな記憶どうしが、ある時結びついて、イマジネーションが生まれる。完全な記憶しかもたないコンピュータは創造はできない。
  • 人間の細胞は約60兆あり、2~3か月でほぼ入れ替わる。しかし、脳細胞は入れ替わらない。脳が入れ替わったら、自分の連続性がなくなってしまうため。
  • 神経細胞一つにつきシナプスは1万個ある。神経細胞は1000億あるため、脳の中のシナプスは1万×1000億
  • 神経細胞ないは電気信号(スパイク)、細胞間(シナプス)では化学反応(神経伝達物質)により情報伝達が行われる。が、スパイクがくれば必ずシナプスに化学反応が起きるわけではなくある確率で起きる。これが、脳のあいまいさの原因。
  • シナプスにはアクセル役とブレーキ役があり、アクセル役はグルタミン酸を放出、ブレーキ役はGABAを放出する。
  • アクセルとブレーキのバランスがとれて、脳が正常に機能する。
  • このバランスが崩れた病気が「てんかん」。重量挙げ選手は訓練によって、このバランスを崩すことができる。また、火事場のバカ力も一時的にバランスが崩れて起きる現象。
  • 記憶は全て神経ネットワークに蓄えられる。
  • ネットワークに信号を蓄える必要な法則「ヘブの法則」・・・神経AとBがあるとする。AとBの神経が同時に活動したら、その二つの神経の結びつきは強くなる。というもの。
脳科学について
  • 自然淘汰は優秀な子孫を残すことをが目的。アルツハイマーは子孫を生んだ後の老人の病気のため、自然淘汰されない。
  • 脳とコンピュータの違い。コンピュータはハードウェアにより動作するが、脳はハードウェアがなくでも自発的に活動する・・・「脳の非エルゴード性」
  • 脳の重さは体重の2%に対し、消費するエネルギーは20%、そのほとんどが、自発活動(ひらたく言えば「ゆらぎ」)
  • 成人男性の1日の消費カロリーは2000kcalとすると脳の消費カロリーは400kcal≒20W ⇒ 電気代に換算すると約300円/月
  • ジャンケン、どわすれ、ふと思い出す・・・「脳のゆらぎ」に起因
  • 脳が見る風景は、本当に見ている風景なのか? 網膜から視床に入る割合:20% 視床から視覚野に入る割合:15% ⇒ 網膜から視覚野に入る割合:20%×15%=3%に過ぎない
  • 外の世界かは入る情報の処理「ボトムアップ処理」に対して、脳内部の処理「トップダウン処理」、脳内の処理のほとんどがトップダウン処理
  • S/N比とは、シグナル/ノイズの比率。音を聞き分ける実験装置は10以上のS/N比が必要だか、人間は1以下でも聞き分けられる。これはトップダウン処理のおかげ
  • 科学は「客観性」と「再現性」を重視する学問
  • 「再現性」を重視する以上、科学が対象にできる現象は限られている。
  • 「科学的なら信じる」という人が多いが、では「信じる」とは何か・・・と考えると、科学は宗教に近く、その基盤は危うい。
  • 相関関係と因果関係は違う。データが相関関係を示していても因果関係があるとは言えない。
  • 科学は「再現性」が必要だが、脳は常に変わっていく・・・再現性がない

もともと、この本は、前回紹介したように、中高生相手に講義したものをまとめたものです。受講者が、興味をひけるように、たとえ話をまじえての説明で、自分が講義を受けているような感覚で読み進めることができました。
なんとなく脳に興味のある方にお勧めです。おもしろ話が散りばめられ、話のネタのレパートリーが増えること請け合いです。

2012年2月6日月曜日

脳疲労に克つ

今回紹介する本は、
『脳疲労に克つ』 横倉恒雄著 角川SSC新書 2008年発行
です。副題が「ストレスを感じない脳が健康をつくる」です。

最近、脳に興味があるため、脳関係の本をいくつか読んでいますが、この本に書かれている内容は驚きの連続でした。
この本に対するいろいろな書評でも書かれていますが、作者の提案する『快食療法』は、かなり過激です。

太った動物(ペットや家畜以外)はいない。それは、本能にしたがって、食べたい時に食べ、食べたくない時は食べないからだ。
しかし人間は、食べたくなくても1日3回食べなくてはならない、と勝手に思い、脳が欲していない時でも食べる。脳に背いたことをし続ければ、脳は疲労する。

脳疲労を克服するためには、脳が喜ぶことをしなさい、ということで、「食べたい時に食べたいものを、好きなだけ食べましょう」と言っています。
そうしているに、自然と、食べすぎることはなくなり、太ることはないとか。
にわかには、信じられない説ですが、実はこれ、実践するのは難しいのです。

作者は、「こんなに食べて大丈夫か?」などと不安がっていてはダメで、楽しんで食べなければ効果はないといっています。
「腹八分目」、「好き嫌いはダメ」、「寝る前に食べてはいけない」など、これまでの人生で、食事に関して教えられてきたことはたくさんあります。それらを全て無視し、罪悪感を感じずに、好きなものを食べることは、なかなかできないのではないでしょうか?

私は今まで、脳に関する本を読み、脳に良いことはできる範囲で実践していますが、この『快食療法』は、実行する勇気がありません。

現代人の鈍った五感を取り戻す『五感療法』は、前述の『快食療法』以外に
  • 臭覚を磨く『快香療法』・・・アロマセラピー
  • 視覚を磨く『快景療法』・・・アートセラピー
  • 聴覚を磨く『快響療法』・・・サウンドセラピー
  • 触覚を磨く『快蝕療法』・・・タッチセラピー
を紹介しています。私自身、この本を読んで、アロマセラピーを始めようと思いました。

また、『生活習慣美容』(生活習慣病ではない)を提唱されています。この「生活習慣美容」の定義は
  • 「生活習慣の中で自ら快適なことを実践し、自然に美しく魅力的に向上する」こと。
「生活習慣病」に怯えながら生活するより、「生活習慣美容」を楽しみながら毎日を送ろう、というものです。実践としては
  • 余裕のある生活をする
  • 禁止の禁止・・・「してはいけない」をやめる
  • 自分の快楽スイッチを用意し、一日何回も快楽スイッチを入れる
  • その日を疲れは家に持って帰らない
  • 遊び心をもって、仕事をする
  • 時間の流れに逆らわない(時空のサーフィン)
  • 自分にあった休養をとる
  • 動物的な感と勘を磨く
  • 人間関係によるストレスを回避する
  • ありのままの自分を好きになる
  • まずは相手の言葉や行動を肯定する
  • 自分と相手との間に一定の距離をおく
  • ナイスエイジング(アンチエイジング
できるところから始めたいと思います。


最後に著者の紹介をします。
横倉恒雄 (よこくら つねお) 1947年生まれ。日本大学医学部卒業。医学博士。慶應義塾大学医学部産婦人科局を経て、東京都済生会中央病院に勤務。聖路加国際病院・日野原重明理事長に師事。日本心身症学会などで「快食療法」を学会発表。現在、横倉クリニック院長として、心身のさまざまな問題を抱える患者に「快食療法」「五感療法」を中心としたアドバイスを行ない、肥満解消、糖尿病・コレステロール値の好転はじめ、女性特有の悩みや慢性疲労の解決などに効果をあげている。 著書に『脳疲労に克つ』『メタボ体質は「脳疲労」が原因だった』などがある。 
http://www.mikasashobo.co.jp/author/597/ より抜粋

2012年2月4日土曜日

シスコで語ろう

今回は、私がティーンエイジャーだったころのバイブルとも呼べる本を紹介します。おそらく一番読み返した回数が多い本です。
『シスコで語ろう』 高橋三千綱著 角川文庫 昭和53年発行

内容は、作者のアメリカ留学時代の実話を書いたものです。登場人物は作者のガールフレンドや友人で、青春時代の甘酸っぱい出来事や、悪友とのハチャメチャな体験が、面白おかしく書かれています。自分も、このようになりたいと憧れていました。

舞台は1960年代のアメリカですので、ヒッピー全盛の、とても刺激的な時代です。ドラッグや妊娠、さらにはベトナム戦争といった問題に対して、作者本人の筋の通った考えも描かれており、当時の私は、かなり影響を受けました。

この本は、作者が帰国後、自費出版したものです。まだ、プロ作家になる前のもので、プロでは書けない、読者をなんとか笑わせようとするサービス満点の作品になっています。それがまた、この作品の魅力でもあります。とにかく、読みやすい。あっという間に読めてしまいます。

私にとって、高橋三千綱作品の中で初めて読んだ本がこれでした。
以来、作者の大ファンになり、当時、発表されていた作品は、漫画も含め、全て読破しました。(漫画の原作も書かれていました)
次第に、作者の生の、ハチャメチャで豪快、しかし、芯が一本通っている生き方にも憧れるようになりました。
(その結果、私の人生は、ハチャメチャにはなりましたが、芯が通っていないところが残念です。)

今の若者にとっては、自分の親世代の青春時代を知ることができる作品です。また、私と同世代以上の中高年にとっては、とても懐かしさを覚える作品だと思います。

作者は、『9月の空』で芥川賞を受賞している作家です。
作者のホームページに面白いプロフィールが載っています。一度見てください。

2012年2月3日金曜日

脳が冴える15の習慣

今回も、本の紹介をします。
『脳が冴える15の習慣』 築山節著 生活人新書 2006年発行


前回紹介した、『能に悪い7つの習慣』 林成之著 幻冬舎新書 2009年発行、とタイトルがよく似ていますが、作者も出版社も違います。
それでは、まず最初に15の習慣を紹介します。
  • 習慣1 生活の原点をつくる 脳を活性化させる朝の過ごし方。足・手・口をよく動かそう
  • 習慣2 集中力を高める 生活のどこかに「試験を受けている状態」を持とう
  • 習慣3 睡眠の意義 夜は情報を蓄える時間。睡眠中の「整理力」を利用しよう
  • 習慣4 脳の持続力を高める 家事こそ「脳トレ」。雑用を積極的にこなそう
  • 習慣5 問題点解決能力を高める 自分を動かす「ルール」と「行動予定表」をつくろう
  • 習慣6 思考の整理 忙しいときほど「机の片付け」を優先させよう
  • 習慣7 注意力を高める 意識して目をよく動かそう。耳から情報をとろう
  • 習慣8 記憶力を高める 「報告書」「まとめ」「ブログ」を積極的に書こう
  • 習慣9 話す力を高める メモや写真などを手がかりにして、長い話を組み立てよう
  • 習慣10 表現を豊かにする 「たとえ話」を混ぜながら、相手に身になって話そう
  • 習慣11 脳を健康に保つ食事 脳のためにも、適度な運動と「腹八分目」を心がけよう
  • 習慣12 脳の健康診断 定期的に画像検査を受け、脳の状態をチェックしよう
  • 習慣13 脳の自己管理 「失敗ノート」を書こう。自分の批判者を大切にしよう
  • 習慣14 創造力を高める ひらめきは「余計なこと」の中にある。活動をマルチにしよう
  • 習慣15 意欲を高める 人を好意的に評価しよう。時にはダメな自分を見せよう

ごらんのように、脳の機能別にまとめられいるため、自分の気になったところだけを読んでも大丈夫なように、構成されています。


以下、内容を私なりにまとめました。
青字:私が実践したい習慣  赤字:私が行う具体的な取り組み 


習慣1 生活の原点をつくる 脳を活性化させる朝の過ごし方。足・手・口をよく動かそう
  • 脳の活動リズムを生活のリズムを一致させる
  • 脳はなまけもの、能を動かす工夫が必要
  • 脳のウォーミングアップとして、思考系の前段階である運動系(足・手・口)を動かすことにより、思考系の脳が働くようになる ⇒ 朝6:00に起床→ストレッチ→コーヒーを作り、飲みながらテレビまたはパソコン→食事→髭剃り、歯磨き、洗顔→水泳用具の準備→トイレ→着替え→持ち物チェック→通勤
  • 運動系の脳を働かせると、脳への血流がよくなる
  • 「挨拶+一言」で脳を心がける ⇒ 1日、一人以上に「挨拶+一言}」をする
  • 手を使う活動を朝の習慣にする

習慣2 集中力を高める 生活のどこかに「試験を受けている状態」を持とう
  • 時間を制約することにより、能の基本回転数を上げる ⇒ 集中する時間を午前と午後に1回ずつ設定する
  • ダラダラ仕事をするより、集中して仕事をする時間を1日何回持てるかが大事
  • 人と競い合うことも集中力を高める

習慣3 睡眠の意義 夜は情報を蓄える時間。睡眠中の「整理力」を利用しよう
レム睡眠:浅い眠り  ノンレム睡眠:深い眠り  R.E.M=Rapid eye movement=高速眼球運動
  • 睡眠中、脳は情報の整理を行っている
  • 夜の勉強は中途半端にやる(睡眠中の整理力をいかす)
  • 脳が情報の整理をするためには、最低6時間は睡眠が必要
  • 寝つきをよくするには、寝る前は癒しの時間としる
  • 「入眠儀式」(夕食後、片付け→勉強→入浴→明日の準備→読書→就寝)を毎日繰り返すと、決まった時間に眠くなる ⇒ 入浴→明日の準備→ブログ→就寝
  • ふとんに入ったら、足→腰→背中→手の指→腕→型→首と意識して力を抜いていくと寝付きやすい
  • 寝る前に、刺激的な映像、激しい運動、激しい議論、指先などの抹消神経の刺激、集中して仕事をするなどのことをしてはいけない
  • 朝、アイデアがひらめいたら、メモをとる(朝、脳にいろいろな入力が入ると、忘れやすいため)
  • 理想的な1日: 
  1. 朝、脳のウォーミングアップのため、朝食をしっかり食べ、足、手、口を意識して大まかに動かす
  2. 短時間で集中して取り組む仕事の時間をつくり、面倒な仕事を勢いで片付け
  3. 脳が疲れて、食事休憩、脳に栄養を与え、疲れをとる
  4. 食後は、胃に血液が集中するため、再びウォーミングアップ
  5. 集中して仕事をし、その余力で雑用をすませる

習慣4 脳の持続力を高める 家事こそ「脳トレ」。雑用を積極的にこなそう
  • 前頭葉は脳の司令塔。前頭葉が強いと知識や経験がなくても、行動に移せる、行動力が強い人になれる
  • 現代人は生活が便利になり、前頭葉を鍛える機会が減っているが、社会は厳しくなっているため、とてもつらい
  • 小さな雑用を毎日少しづつ片付けると、前頭葉は強くなる
  • 家事もパターン化すると前頭葉は鍛えられないので、時には、新しいことを取り入れる

習慣5 問題点解決能力を高める 自分を動かす「ルール」と「行動予定表」をつくろう
  • 書類の整理、机、書棚の整理、衣類の整理、初対面の人との対応などの「ルール」をつくり、習慣化するまで、紙に書いて貼っておく
  • 自分の行動予定表を、前日の夜か当日の朝に紙に書く
  • 一日の終わりに、予定表通りにできたかチェックし、できなかったら、なぜできないか分析する
  • 現代は、なんでも指示をしてくれる「ナビゲーション社会」で、自分で考える機会がへっている
  • 自分でルールを作ったり、予定を決めたり、頭を使うことが必要

習慣6 思考の整理 忙しいときほど「机の片付け」を優先させよう
  • 「思考のファイル化」頭の中に分類して物事を覚える
  • 整理の時間をおしまず、引出しの整理、カバンの整理をしておく ⇒ すでにできている習慣
  • 書類の整理をすると、頭の中も整理される  ⇒ すでにできている習慣

習慣7 注意力を高める 意識して目をよく動かそう。耳から情報をとろう
  • テレビやパソコンばかりの生活を続けると、眼の動きが遅くなる
  • 眼の動きが遅いと、人に声をかけられたとき、すぐにその人に焦点を合わせられない
  • 話し相手にすぐに焦点を合わせられないと、最初の言葉を聞き漏らす
  • 人に話しかけられた時に、パッと反応できなくなり、次第に、周囲の情報に疎くなる
  • 1時間に1回は目(特にフォーカス機能)を良く動かすようにする ⇒ 1時間に1回、窓の外を見る
  • 時間がある時は外に出て散歩し、目のよく使う(音楽プレイヤーを使用しない) ⇒ 時間のあるときはできる限り実施したい
  • ラジオなどで、耳から情報をとる訓練をする ⇒ 車内では、音楽を聴かず、ニュース番組、トーク番組などを聞く

習慣8 記憶力を高める 「報告書」「まとめ」「ブログ」を積極的に書こう
  • 人に伝えることを前提として、情報を取る
  • メモを取りながらテレビを見る
  • ブログを書く  ⇒ すでにできている習慣
  • 家族や友人との雑談も記憶力に対して有効 ⇒ 家族との時間を多くもつ

習慣9 話す力を高める メモや写真などを手がかりにして、長い話を組み立てよう
  • メモを用意して、そのキーワードをたどりながら、慣れない話を長くする
  • 写真を用意して、それを示しながら、表現を膨らましていく

習慣10 表現を豊かにする 「たとえ話」を混ぜながら、相手に身になって話そう
  • 表現力豊に話をすることは、脳機能を高めることに有効
  • 表現を豊にするには、いくつかのバターンを身につけ、訓練することが有効
  • ①話し相手の聞きそうな質問を考えて話す ②メモを用意する ③風景を思い浮かべる
  • たとえ話を混ぜながら話そうとすると、脳が総合的に鍛えられる ⇒ スピーチの場では、たとえ話を入れる

習慣11 脳を健康に保つ食事 脳のためにも、適度な運動と「腹八分目」を心がけよう ⇒ すでにできている習慣
  • 高血圧や糖尿病は脳機能を低下させる

習慣12 脳の健康診断 定期的に画像検査を受け、脳の状態をチェックしよう
  • 脳の画像検査により、病気を発見するだけでなく、問題の機能もわかる

習慣13 脳の自己管理 「失敗ノート」を書こう。自分の批判者を大切にしよう
  • 自分がした失敗を分析すると、脳の問題が見えてくる
  • 脳の問題を分析するためには、まず、自分の失敗を記録する ⇒ このブログに自分の失敗を記録する

習慣14 創造力を高める ひらめきは「余計なこと」の中にある。活動をマルチにしよう
  • 創造力は脳の総合力
  • アイディアは情報の組み合わせ、無から有は生み出せない
  • 書くことによって脳に刻み込み、まとめをしながら考える
  • 活動をマルチにして人生を楽しむ ⇒ 水泳、ブログ(読書)以外の趣味を見つける

習慣15 意欲を高める 人を好意的に評価しよう。時にはダメな自分を見せよう
  • 意欲を高めるには、自分の行動と結果を評価してくれる人が必要
  • 生活のどこかにダメな自分を見せる場面があると、評価のハードルが下がり、評価されやすくなるため、意欲は高まる

まず、気になったのは、習慣7 注意力を高める です。この章は私のために書かれていると思いました。家に帰れば、テレビかパソコンのどちらかの前に常にいますし、相手の最初の言葉を聞き逃すことは日常的におきています。この本を読むまでは、耳がわるいためと思っていましたが、注意力が散漫なためだと気づきました。

習慣15 意欲を高める では、「自分の行動と結果を評価してくれる人が必要」とあります。今までは、人の評価を気にしない、ということが、メンタリティとしてはよいことだと思っていましたので、戸惑いました。悪いことは気にせず、よいことは意欲を高めるために必要、と解釈することにしました。何事も、行き過ぎはよくないということです。

全体を通して、自分ができているところと、できていないところが、はっきりしました。赤字の項目を実践することにより、脳を鍛えて行きたいと思います。


著者紹介
築山節プロフィール 1950年、愛知県生まれ。日本大学大学院医学研究科卒業。埼玉県立小児医療センター脳神経外科医長、財団法人河野臨床医学研究所附属第三北品川病院長を経て、同財団理事長。医学博士。脳神経外科専門医として数多くの診断治療に携わる 脳が冴える15の習慣―記憶・集中・思考力を高める (生活人新書)
http://dreamnlp.sblo.jp/article/17813... より抜粋