2012年2月22日水曜日

宇宙は何でできているのか

今回紹介する本は
『宇宙は何でできているのか』 村山斉著 幻冬舎新書 2010年発行
です。

私は、宇宙論や素粒子論に興味があり、大学を卒業して以来、今までにこの手の本をいくつも読んできました。この分野は分かっていないが多く、通説と思われてきたことがひっくり返ることがしばしばあります。したがって、数年前に仕入れた知識は実は間違っていた、となりかねないので、ときどき最新の情報をチェックする必要があります。

この本の内容はタイトルどおり「宇宙は何でできているのか」なのですが、結論からいうと、「ほとんど分かっていない」ということです。これまでは、宇宙は星やガスなどの通常の原子でできていると思われてきました。おそらく、宇宙に興味のない方は、いまでもそう思っているのではないでしょうか。
しかし、質量がないと思われていたニュートリノに質量があることが分かり、しかもそれは、宇宙にある全ての星とほぼ同じ質量を持っていることがわかりました。これが1998年のことで大事件でした。
では、ニュートリノと全ての天体とチリやガスなどの原子がすべてかといえば、そうではありません。
今わかっているのは
  • 星と銀河 0.5%
  • ニュートリノ 1~1.5%
  • 普通の物質(原子) 4.4%
合計 約6%
分かっているのは、たったの6%です。残りの約94%は現代の科学では分かっていないのです。
少し前までは、全てわかっていたつもりだったのですが、最近になって、ほとんどわかっていないとこが分かりました。これが2003年のことです。

それでは、どうしてこんな事態になったかといえば、宇宙が今どんな状態かを見誤っていたためです。これまで、宇宙は現在膨張しているが、いずれは重力により膨張の速度が弱まると考えられてきました。しかし、最近になって、宇宙の膨張が加速しているという観測データが出てきました。
これが正しければ、今分かっている宇宙の全質量では、つじつまがあいません。
この観測結果は正そうなので、データより計算すると、他に約94%の質量がどこかにないとおかしいということになったのです。

では残りの94%は何かというと、23%が暗黒物質(ダークマター)、73%が暗黒エネルギー(ダークエネルギー)というものでできていると考えれられています。しかし、これらが何かはまだわかっていません。
今分かっていることは、天の川銀河の質量だけでは、我が太陽系は天の川銀河にとどまっていることができない。とどまっているためには、もっと質量が必要で、その質量分の物質をとりあえず暗黒物質と名付けた、これだけです。
では、暗黒エネルギーとは何かと言えば、暗黒物質以上によく分かっていません。宇宙の膨張は重力の影響で減速すると考えられてきましたが、実際は加速しています。加速するためには、膨張を手助けする何らかのエネルギーが必要であり、そのエネルギーの名をとりあえず暗黒エネルギーと名をつけた、分かっているのはこれだけです。

これから、暗黒物質や暗黒エネルギーについては、いろいろなことが新発見されると思います。
ニュース等で暗黒物質、暗黒エネルギーといったキーワードが出てきたときは、要チェックです。

最後に著者の紹介をします。
東京大学理学部に入学し、素粒子物理学を専攻。東北大学助手の後に渡米。2008年現在、カリフォルニア大学バークレイ校 MacAdams 冠教授。東京大学数物連携宇宙研究機構機構長。
主な研究分野は超対称性理論、ニュートリノなどである。
著書
『宇宙に終わりはあるのか?―素粒子が解き明かす宇宙の歴史』 (ナノオプトニクスエナジー出版局、2010年10月)
『宇宙は何でできているのか』 (幻冬舎、2010年9月28日)・・・ウィキペディアより

著者は「小学2年生の頃、微積分を理解した」という、天才肌の研究者です。
著者の提案した研究に国は約100億円の予算をつけました。40代の研究者にこれだけの金額を国が委ねることは極めて異例なことで、著者への期待の高さがうかがえます。

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